(ジャック・バウワーの監視下から逃れたジョー・バイデンは、毎日のように表舞台で活躍し、報道されるようになった。予想通り、グリーンヴィル宅で護衛官が狙撃された事件や、装甲車の襲撃や軍用ヘリの墜落というニュースは一切流れていない。バラク・オバマによって完成されたメディア統制はかなりの精度だった。・・・これじゃぁ、中国のことを笑えないよな・・・ジャックは、独りつぶやき、苦笑いした。ターゲットであるバイデンやマコーネルは、常に護衛を付けて移動している。ありきたりの手段では密かに確保し、真実を吐かせることはできなかった。万が一にも、彼らの拉致が表沙汰になり、それが「トランプ大統領の命令によるもの」と報道されれば、それこそ命取りになる。・・・Damn it !・・・)
(ホワイトハウスに近いウィラード・インターコンチネンタル・ワシントンのセミスィートに作戦室を構えたジャックは、独自の人的ネットワークを駆使して、ジョー・バイデンへの接近を図るが、ことごとく壁にぶち当たっていた。次期大統領の警護は堅い。密かに拉致することは不可能であったし、拉致せずに尋問することも極めて困難であった。クロエ・オブライエンは、セミスィートの一室を陣取って、機器をセットし、情報収集と分析に余念がない。しかし、クロエも、ジョー・バイデンの行動スケジュールや護衛官の配置に関しては、ある程度探ることまではできていたが、決定的なチャンスを見つけるには至っていなかった。・・・ジャックがいつものように塞ぎこんでいると、クロエが話しかけてきた・・・。)
ねぇ、ジャック・・・。今回の「不正投票」って、投票計算機のドミニオンシステムの問題はあるけれど、投票を「郵便投票」でいいという風に制度を変更したことも大きかったわよね。・・・そうそう、それで民主党は「新型コロナウイルス感染症が感染拡大しているから仕方ない」って主張しているけれど、「郵便投票にしていい」って制度を変更したのは、2019年の秋前後だから、じつは理屈が合わないのよ。テキサス州が最高裁で判断してもらおうとした4州は全部「新型コロナウイルス感染症」の問題が表面化する前に、郵便投票を大幅に認めるためにルールを変更または緩和しているわ。例えば、ペンシルベニア州は、「希望する人は誰でも不在者投票(期日前投票)として、郵送投票をすることができる」とするACT77を成立させたけれど、ペンシルベニア州の憲法は、「期日前投票の要件として、①仕事の都合、②病気や障害のため、③宗教上の理由、④選挙運営スタッフであることを明確に定めているから、明らかな違憲な法案だったわけよね。このACT77を成立させるためには、州憲法を改正する必要があったのに、改正するための手続を終えなかったのだから・・・。これを問題視したトランプ陣営が、選挙前に提訴したら、ペンシルバニア州の最高裁は、「まだ具体的な被害が出ていない。不正投票が行われると主張しているが、それはあくまでも想像の域を超えず、具体性を欠くので訴えを聴くことはできない」として棄却し、選挙後に提訴したら、「手続に関する裁判は、選挙前に提訴すべきだ」として却下されちゃった。違憲判断を避けたわけよ。・・・「そんなことは知ってる!」と怒鳴らないで・・・。
私が気になっているのは、その「郵送投票」を正当化した「新型コロナウイルス感染症」のことなの・・・。2020年の春頃から「新型コロナウイルス感染症」がアメリカ国内で広まってから、民主党の州知事が中心になって、ガンガン「ロックダウン(都市封鎖)」を始めたでしょ。それで、結果的に「郵便投票」が正当化された経緯がある。それで経済がガタガタになり、失業者がめちゃめちゃ増えたわけだけれど・・・。でもね、そもそも「郵便投票」を正当化した「ロックダウン」は、「新型コロナウイルス感染症」の対策としてあまり効果がない、という話があるわけ・・・。スウェーデンでコロナ対策を陣頭指揮しているアンデシュ・テグネルは、「ロックダウンに科学的根拠はない。こうした措置を取ったEU加盟国が措置の効果を分析した結果を事前に公表していたかどうかを調べたが、そうした国はほとんどなかった」と断言しているわ。実際、アメリカの事例で見ても、「すでに感染が広がっている状況において、1人の感染者が次に平均で何人に移すか」を示す指標である実効再生産数(Rt)の推移を見ると、ロックダウンが実施される以前からRtは急降下を始めていたわ。「ロックダウンをしたから、感染者数が減った」という因果関係は事実によって否定されているわけよ。
たとえば、フロリダ州では、外出制限令が出された4月上旬時点でRtが「1」を切っていた。ロックダウン前に、Rtは自然に減少していたののよ。逆に、ノースダコタ州では、5月上旬のロックダウン解除前に、Rtは再増加して「1」を超えていた。つまり、解除後に増えたんじゃないの。反トランプで有名なアンドリュー・クオモ州知事が統治するニューヨーク州は、「感染のホットスポット」になったけれど、ロックダウンの開始時にはRtが「1」まで下がっていたわけ。つまり、感染の鎮静化とロックダウンに因果関係はない可能性がある・・・。私が気になったのは、クオモ州知事のメールにアクセスすることができたんだけど、彼は部下に対して、「バイデンが大統領に就任したら、ロックダウンは解除する。ワクチンが普及するまで待ってはいられない。ダメージが大きすぎる。経済を再開すべきだ(We simply cannot stay closed until the vaccine hits critical mass. The cost is too high. We must reopen the economy.)」って話してるのをキャッチできた・・・これって、意外でしょ? 彼はトランプが主張する経済再開(reopen)に大反対し続けてきたわけだから・・・。
(2億4434万件(2020.12.27時点)のPCR検査を実施した米国は、人口100万人当たりの検査数が73万8200人と、名実ともにPCR検査先進国である。しかし、その米国の感染者数は1920万人で死者数は33万3000人となっており、両カテゴリーで世界ワースト1だ。人口100万人当たりの死者は921人で、世界ワースト第10位の体たらく。つまり、民主党の州知事たちが主導してきた「検査数の拡充と追跡・隔離の実施」や「ロックダウン」は、感染抑制や死者数減につながってこなかった。「ロックダウンでヒトとヒトとの接触を最小化すれば、感染拡大は収束する」という念仏は、有効に機能してこなかったと言える。じつは、そういう指摘は、心ある公衆衛生学者たちからも指摘されていた。スペイン風邪の経験があったからだ。)
(1918年から1919年に全世界を席巻し、数千万人に及ぶ死者を出したスペイン風邪は、米国の諸都市でも猛威を振るった。リチャード・J・ハチェット博士の研究(2007年)では、流行期間中の累積超過死亡率0.3%だったセントルイス市と0.7%だったフィラデルフィア市の違いについて、「1918年9月17日にフィラデルフィアの民間人の最初の症例が報告されたが、当局はその重要性を軽視し、1918年9月28日の大規模集会、とくに市全体のパレードの続行を許可した。学校の閉鎖、公的な集会の禁止、およびその他の社会距離への介入は、病気の蔓延が地域医療と公衆衛生資源を圧倒し始めた10月3日まで実施されなかった。対照的に、セントルイスの民間人における最初の症例は10月5日に報告され、当局はすぐに社会距離を広げる一連のさまざまな措置を導入し、10月7日にこれらを実施した」とし、セントルイス市長のすばやい決断と対応が感染爆発を予防したと主張している。しかし、ミネソタ州のセントポールでは、最初の患者が報告されたのは9月21日、市当局が動いたのはフィラデルフィアよりもはるかに遅く1ヶ月以上経った11月6日であった。にもかかわらず、セントポールでは感染者数のピークは低く、最終的な死亡率もセントルイスと大きくは異ならない(0.4%程度)。要するに、個別の都市の事情によって大きく違うため、「学校の閉鎖、公的な集会の禁止、およびその他の社会距離への介入」が有効であったと一概に決めつけることは難しいというのが実情であった。・・・)
実際、歴史学者のアルフレッド・W・クロスビーは、「実際、閉鎖命令を厳格に適用した地域の患者発生率や死亡率は、そうでなかったところとくらべて特に低くもなく、それどころかむしろ高かった例もしばしばあった。しかしながら公衆衛生当局にしてみれば、何かしないではいられず、劇場や学校、玉突き場、そして教会にまで閉鎖命令が出された。1918年秋、どこにでも見られた風景だった」なんて語っているわ・・・。著名な公衆衛生学者も、「ロックダウンをすばやく行っても、感染症の死亡率そのものには影響しないか、もし影響するとしても弱い影響に過ぎない」という結論に至っている。公衆衛生的な措置によって感染者数のピークを下げるという効果はあるけれど、感染者ピークを下げても解決にはほど遠く、措置を解除すると、すぐさま第二波の感染者ピークが起きるというのが実態なのよ。・・・「それで何が言いたいんだ!」って怒らないで、ちょっと聞いて・・・。これは、あくまでも、一つの「仮説」にすぎないんだけれど・・・、ひょっとしたら、この「新型コロナウイルス感染症」の一連の騒ぎは、企図され、計画されたものじゃないかしら・・・。だって、あの強硬なロックダウン派だったアンドリュー・クオモが、バイデンが大統領に就任次第、ロックダウンを解除するって言ってるのよ。これって、疫学的なものじゃなくて、政治的なものなんじゃないのかしら?
(銃の手入れをしていたジャック・バウワーは、作業する手を止めて、クロエ・オブライエンの次の言葉を待った。自分の話にジャックが興味を持ち始めたことに気付いたクロエは、瞳を輝かせながら、これまでの調査結果を語りはじめる。・・・)
――「24-Twenty-Four-《ジョー・バイデン物語》第55話(2/1予定)」に続く。
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