(毛沢東の写真こそ持ち歩いてはいないが、「習近平の写真」を持ち歩いているがごとくみなされているジョー・バイデンは、これから、どこへ行っても相手にしてもらえない立場になる可能性があった・・・。トランプ大統領は、あきらかに中国を敵国視しており、今回の「不正投票」で明らかな中国の関与が立証されたならば、習近平に対して、これまでとは比較にならない強硬な態度で接することになるだろう。最悪の場合、新型コロナウイルスは中国が開発した「ウイルス兵器」だったとして、武力戦争に向かっていく可能性だってないとは言い切れない。もしも、新型コロナウイルスが「中国のウイルス兵器」であったとすれば、それは、「中国がアメリカ国内に対してミサイルを発射した」ことに等しい。だからこそ、トランプは、確信犯的に「チャイナウイルス」と呼んできたのだ。中国が先制攻撃を仕掛けた以上、リベンジするのは当たり前になる・・・。何と言っても、米国の最高権力者である大統領の選挙に影響を及ぼそうとしたのだ。その事実が証明された場合に、ドナルド・トランプがその事実をスルーするとは思われなかった。それよりも何よりも、米国国民は、中国に対する優柔不断な態度を許さないだろう。・・・)

(すでに米国の世論は昂ぶりを示している。トランプの側に立って裁判で戦っているリンウッド弁護士は、12月2日にジョージア州で集会を催したが、なんと20万人を超える参加者が集まった。その参加者たちの前で、中国を敵国とみなして、魂が震える演説を行ったのだが、これがものすごい共感を呼び起こした。リンウッドはありったけのエネルギーを注いで叫んだ ――「これは、アメリカが独立した1776年の再来だ! お前たちは、私たちから自由をより上げることはできない。私たちは自由のために戦う。北京よ、中国よ、聴いているか! 中国共産党よ、私たちはこの国を決して乗っ取らせはしない! そんなことは絶対に起こさせない! ここはアメリカだ。お前たちは戦う相手を間違った。ジョージ・ソロスよ、アメリカから出て行け!」―― このリンウッドの演説が、ジョージア州の市民だけでなく、全米のアメリカ人の心を揺さぶったことは間違いない。もはや「トランプ vs バイデン」というレベルではなく、「共和党 vs 民主党」という対立軸でもなく、「米国市民 vs 不正投票で自由を剥奪する者たち」という最終戦争の様相を示している。大統領選がどのように決着するかにもよるが、米国と中国の関係が、これまでどおりで済まなくなることだけははっきりしていた。・・・しかし、助手席に座っているジョー・バイデンの魂は、その近未来にまでは考えが及ばず、ジョージア州の域内で彷徨っている。・・・)

カマラ・ハリスから「不正投票」のことを聞いた俺は、その足で、ジョージア州の大統領選挙を裏で仕切っていたヒラリー・クリントンのところに行って、直に詰め寄ったわけよ・・・。俺には聞かされてなかったからな・・・。あのビッチも、始めは「ああでもないこうでもない」とごまかそうとしたんだが、俺は、カマラからもらった動画を突きつけてやった。・・・そしたら、開き直りやがってよぉ、「そもそも、十分な票を獲得できなかったお前が悪いんだ!」と言って逆切れしやがるんだよ。あったまくるよなぁ。あのビッチは、逆に俺を責めやがるんだ。「俺がもっと人気があったら、こんな苦労はしなくてよかった。俺の尻拭いをしているんだ!」って言いやがるんだよ。

あのビッチが俺に話したところによれば、ジョージア州では、投票権がないにもかかわらず、17歳未満が66,000人も投票していたし、10,315人の死人も投票に参加していたんだとよ・・・。登録期間をすぎてから登録したのに投票した奴が4,926人もいて、2,432人は登録すらしていなかったのに投票したんだそうだ。ジョージア州では重犯罪者っていうのは、本来投票できないんだが、そういうヤツらも2,500人投票していたし、郵便ポストが違っているのも1,034人いた。住所変更届を出したので投票権がないのに投票していたのが15,700人もいて、もうすでに引っ越して住民ではないから投票できない人たちも40,279人が票を投じていたらしい。だから、諸々合わせると143,000票を超える不正投票があったわけだ。あきれ返るよな、こりゃ・・・。俺が表面上の得票で、トランプに差を付けているのはたった12,000票だぜ。要するに、俺は軽~く負けていたわけだ。・・・トランプが怒るのも当然だよな・・・。

ヒラリーによれば、ネバダ州でも、あのビッチは同じようなことを指示して実行させたらしい。トータルすれば、10万票くらいにはなるようなんだが、一番大きかったのは、カリフォルニア州の住民に二重投票をさせるやり方だったんだとさ・・・。要するに、カリフォルニア州で投票してから、隣のネバダ州に来て投票させるわけよ。それが何と4万人もいたというんだから驚きさ・・・。そのほかにも、ワゴン車の中で郵便投票用紙を開封して、書き換えたり、シールを剥がしてつけたり、などやりたい放題だったらしい。車中での行為が見られないように、ワゴンの周囲に人間の壁を作ったらしいんだが、そのほうが怪しいよな。ハハハッ・・・。共和党員が投票するのを阻むという地道な妨害も何百回と実施したようだ。ネバダ州での俺の票はトランプの33,000票差にすぎないから、これも俺が負けていたことになる。・・・あ~あ、知らなかったとはいえ、たまんねぇよなぁ・・・。

(共和党上院の院内総務を担っているミッチェル・マコーネルが待つルイビルへと向かうルート71の景色は、2人が乗った白いパジェロの背後から明るくなりつつあった。分厚かった雨雲はどこかに行き去ってしまったようだ。明け方に特徴的な薄いオレンジ色の太陽をバックミラーで確認したバウワーは、少し肩を落としてうなだれている雰囲気のバイデンに尋ねた。・・・それで・・・どこでマコーネルと落ち合うんだ?・・・)

ああっ、そうだな。いま何時だ・・・。もう朝の6時か・・・。連絡を取るから、ちょっと待ってくれ・・・・・・。ああ、ミッチ。ジョーだ。もう起きていたか・・・ああ・・・、もう小一時間でルイビルに着く・・・。うん・・・ああ・・・あそこだな・・・わかった。念のため確認しておくが、誰にも言ってないよな。・・・こちらは、俺とCTUのバウワー捜査官と一緒だ。・・・いやっ違う。トランプが俺の護衛のために付けた男だよ。・・・ああ、例の話は2人っきりで話す。バウワーには聴かせない。・・・ああ、・・・。絶対に誰にも言わないでくれ。俺とお前だけの話だ。・・・7時に落ち合おう。後は、会ったときにな・・・。じゃあな、See You・・・。

なんだよ、ジャック・・・。あぁ、俺とミッチが2人だけで話すのが気に喰わないのか? 話の内容は、終わった後にちゃんと話してやるから、ミッチとは2人だけで話をさせてくれ。奴とは長い付き合いだから、微に入り細を穿って打ち合わせなきゃならん・・・。お前がいると、あいつと肚を割って相談することができないんだ。ミッチが嫌がる・・・。ワシントンの流儀は、俺の方が詳しいんだ・・・なぁ、ジャック、頼むよ。20分前後で終わると思う。俺もこのままやられっぱなしじゃないことを、習近平のやつに思い知らせてやるのさ。あとは仕上げを御覧じろだ・・・。

(ケンタッキー州最大の都市ルイビルは、ケンタッキーダービーの開催地であり、偉大なボクサーであったモハメド・アリの故郷ということで有名な街である。バーボンウイスキーの一大産地でもあり、南部のホスピタリティが訪れる人を迎え入れてくれる都市だ。バイデンのお気に入りのジャック・ダニエルは、テネシー州リンチバーグの酒造メーカーだったが、1957年よりケンタッキー州ルイビルに本拠地を置くブラウン・フォーマンの子会社となっていた。「ジャック・ダニエル」だけでなく、「アーリータイムズ」をはじめ、リキュール「サザンカンフォート」「シャンボール リキュール」、ウオッカ「フィンランディア」など、25以上のブランドを世界160カ国以上で販売している世界有数のスピリッツメーカーになっている。この大企業は、ミッチェル・マコ―ネルの有力な支援者でもあった。・・・)

――「24-Twenty-Four-《ジョー・バイデン物語》第27話(1/27予定)」に続く。