(バイデンっ! 祈っている暇はねぇ。こっちだ!――トニー・アルメイダがヘリの方角に向かうや否や、ジャックは、ジョー・バイデンの肩をつかみ、激しく揺さぶって、正気に戻した。トニーから聞いた方角に向かって、ひたすら緩やかな丘陵を下っていくと、お目当ての黒いレクサスに辿り着いた。V型6気筒3.5Lエンジンを積んだIS350が原型だが、CTUのメカニックが丹精込めて改良した自慢の車輛だ。銀幕の中で活躍するジェームズ・ボンドほどの奇抜な改造はされていないが、十分な防御性能と攻撃能力を兼ね備えている。ジャックが運転席に乗り込み、バイデンを助手席に迎え入れると、レクサスは音もなく走り始めた・・・。耳に突っ込んだインカムからは、トニーの声が聞こえる。・・・・・・敵が乗ってきた軍用ヘリに乗り込んだトニー・アルメイダは、操縦桿を握って巧みに機体をコントロールし、黒いレクサスの上空で護衛する配置についた。ひたすらに突っ走る黒い影の後をぴったりとついてくる。車中の2人を恐怖に陥れてきた「バリバリバリ・・・」という轟音は、今度は頼もしい音に聞こえてくる。)
(血だらけのヘリにひとり乗り込んだトニー・アルメイダは、傭兵たちが残したメモを、操縦席で見つけた。アルファベットの記号が殴り書きされている紙片は、どうも傭兵たちへの指示を表しているようにみえる。一見したところ、「BCとBOの指示を受けて、BHがBJの確保を命じた。BJの確保が難しければ、BJの生死は問わない」という内容らしい。傭兵は、カネだけの関係で、雇い主に対する忠誠心はないから、「自分たちが死んだときに雇い主に迷惑を掛けないように通信文を暗号化する」という配慮がなかったのだろう。そう考えれば、メモが真実を語っている可能性は高い。その例に当てはまるとすれば、BCはBill Clintonだろうし、BOはBarak Obamaのはずだ。BJは姓名は逆だが、Biden Joeを意味するとすれば、このメモは、ビル・クリントンとバラク・オバマがバイデンの確保あるいは殺害を命じた証拠になる。ただ、BHというのは誰なのか? バイデンの息子のHunter Bidenのことを意味するのか?・・・・・・「バイデンっ! お前の息子のハンター・バイデンはどこにいる? ハンターは、オバマの一味なのか?」 トニーからの連絡を受け、思案に暮れたバウワーは、隣席にいる老人を怒鳴りつけた。)
ナニ言ってんだい、バウワー。俺の息子がバラク・オバマのサイドにいるわけがないだろう・・・。俺はそれだけは絶対に許さないつもりで、身体を張って、あいつを守ってきたんだ。あいつらの悪事に染まったら、普通の人間じゃなくなる。あいつらは、人間の顔をした怪物さ。じつの息子を、あいつらみたいなモンスターにしたいわけないだろう。俺は、中国共産党のカネにまみれてズブズブだし、そのカネをもらうときに、じつの息子であるあいつを使っちまった。本当に罪深いことをしちまったよ。あいつが、麻薬に走ったのは、そういう悩ましい立場に置かれているという現実から逃避したかった・・・という面が否定できないと思っている。だから俺は「父親失格」だ。そのことはよくわかっている。でも、俺の方から、あいつをオバマやヒラリーに引き合わせたことは一度としてない。俺は、オバマたちの悪の手からあいつを守るために、中国から分捕ったカネで力をつけて対抗しようとした。あいつらが「権力」で来るなら、俺は「カネ」で戦おうとしたんだ。結局は、それが行き過ぎて、息子をダメにしちまったんだがな・・・。
それにしても・・・なんで、オバマの話に俺の息子が出てくるんだ? ナニっ? ビル・クリントンとバラク・オバマの指示を受けて、ジョー・バイデンの確保を命じられた「BH」って奴が分からないんだ、って・・・・・・。オイオイオイ、ハッキリ言っとくがなぁ、その「BH」がハンター・バイデンだという可能性はゼロだよ。俺の息子は、そんな血なまぐさいことはできない。俺と同じで、小心者で、「殺し」って奴が嫌いなんだ。民主党だからって、ANTIFAやBlack Lives Matterみたいな奴ばっかりと思わないでくれよ。確かに、民主党には、国会議員のくせに、威嚇するための恐ろしい動画を送りつけて、トランプの支持者たちを脅迫したシンシア・ジョンソンみたいな奴はいるよ。デトロイト出身のミシガン州下院議員のあいつさ。でもさ、俺の息子をあんな奴と同類にしないでくれ。あいつは、俺と同じで情けない奴なんだが、殺しみたいな野蛮なことに係るような、心まで真っ黒な奴じゃない。それだけは信じてくれ・・・。
(ミシガン州下院議員のシンシア・ジョンソンが、トランプ支持者を恫喝し、民主党の戦士たちに呼びかけた動画は、ネット上でかなりの物議を醸していた。ジョンソン議員は、まず、「これは、お前たちトランプ支持者(Trumper)たちへの警告だ(Warning)。・・・気を付けろ。踏みしめてそっと歩け。我々はお前たちと遊んでいるのではない(We are not playing with you)」と警告した後で、なんと、「戦士たちへ告ぐ(for those of you who are soldiers)・・・あなたたちは、それをどうやって実行するかを知っている(you know how to do it)。なめてかかるな(Do it right)。うまくやれ(Be in order)。奴らに代償を支払わせろ(make them pay)」と言って、暗に暴力を煽ったからだ。しかも、その動画に映っている顔が、もろに脅迫する顔なのだ・・・。)
俺と息子を、シンシアなんかと同類として扱わないでくれ。シンシア・ジョンソンってビッチは、どちらかと言えば、ヒラリーと同類なんだ。ヒラリーとな・・・。人を殺してもなんとも思わないような奴は、ああいうえげつないビッチか、腹黒いオバマやビルみたいな化け物たちの仲間さ。いや・・・・ちょっと待てよ、あのよぉ、「BH」って、Bitch Hilaryなんじゃねぇの・・・。そうそうそう、きっとそうだよ。さっき襲ってきた傭兵たちだって、きっとクリントン財団の奴らだろ、きっと。だからさ、その傭兵たちも、ヒラリーのことを陰で「ビッチ」と呼んでたのさ。ハッハッハッハ・・・。こいっつぁー笑える。ヒラリーの奴、大金を支払っている傭兵からも「ビッチ」だって思われてたんだなぁ。確かに、あいつは、ビッチの中のビッチさ。面の皮が10㎝くらいはあるから、どんな恥でも動揺しないし、どんな批判にも挫けない。世の中に怖いものなんてないんだろうな。でもよぉ、そのビッチも、12月2日に公表されたトランプのスピーチ動画にはビビってたぜ。
そうそうそう、あのトランプが神妙な顔で、「今までしてきたスピーチの中で一番重要なものになるかもしれない(This may be the most important speech I’ve ever made)」と冒頭に断った後で46分くらい延々としゃべった、あの演説だよ。あいつは、昂ることもなく淡々と、大統領選において行われた数限りない不正選挙の実態や不正行為を列挙していった。登録有権者が投票権のある人口より多い郡が多々あるとか、死んだ人、引越をした人、外国籍でも、誤った住所で複数の州に住んでいる人にも関係なく投票用紙を送付したとか、ドミニオンの投票機のことも言ってたっけ。ウィスコンシンでは100,000名以上の住所が怪しい有権者を確認もしなかったとか、トランプが勝っていたのに午前3:42に突然大量に票が担ぎ込まれて、そのほぼ全てが俺に入ったとかな・・・。ミシガンでも勝っていたのに午前6:31に149,772票が突然俺には行ったとかさぁ。ジャック、念のため、再度断っておくが、俺は「不正投票」は知らなかったんだからな。ヒラリーとは一緒にしないでくれよ・・・・・・。それに、ペンシルベニア州の最高裁判所が10月23日に郵便投票に記載された署名と登録されている署名が一致しなくても、票が無効にならないようにしたことは違法だとか、結構細けぇことも言ってたっけなぁ。共和党は、上院でも、下院でも、勝っているのに、それを指揮している現職の大統領が負けるというのは統計的に不可能だとかも言ってたよ、確かなぁ・・・。
(ジャック・バウワーも、そのスピーチは、最初から最後まで観ていた。トランプ大統領は、「大統領である私にとって、法律を守ることと、アメリカ合衆国憲法を守ることよりも重要な責務はない。私は、組織的かつ執拗な攻撃に晒されているアメリカの選挙制度を守ることを決心した」と断言していた。「民主党は、選挙結果がどんなものになるのか分かっているような振る舞いをしていた。彼らは、その間に不正選挙の証拠の隠蔽をやっていたのだろう。もし、そうだったとすれば、アメリカにとってものすごく悲しい事だ。しかも、多くの主要な州で投票数が数えられている最中なのに、メディアは、勝者を決め付けようとする組織的な行動をした」と訴えてもいた。・・・)
(そして、トランプ大統領は、「憲法によって定められた手順は守らなければいけない。私は、合法的な票を全てきっちりと数えて、非合法な票数を全て除外することにより、投票の誠実性を守りたい。これは、私のために票を投じてくれた7,400万人のアメリカ人に敬意を表するためだけでやっているのではない。これはアメリカ人がこの選挙を、そしてこれからの全ての選挙を信頼できるものにするための闘いなのだ」と心から叫んでいたようにバウワーには感じられた・・・。いつもと違って、大袈裟なパフォーマンスも、声を荒げることも、軽いジョークや侮蔑的な言葉もない。大統領からアメリカ国民に送る真摯なメッセージだった。静かな語り口なのに、いつしかジャックの目頭が熱くなったことからも、多くのアメリカ人の心を打つスピーチだったことは事実だ。ただし、ヒラリー・クリントンを罵倒する老政治家の見方は、それとは異なっていた。・・・)

――「24-Twenty-Four-《ジョー・バイデン物語》第33話」に続く。

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