NHK の「やさしい猫」が「オーバースティの外国人に対する許容や寛容」を説く中、入管自体も「オーバースティの外国人に対する異次元の優しさ(?)」を示すようになり、オーバースティになっても「特別受理」という「超法規的措置」によって「短期滞在ビザ」を許可したり、「収容せずに放置する」という「超責任放棄措置」を講じています。

それどころか最近は、「オーバースティにならずに日本で在留し続ける方法」を入管窓口が指南するケースすら出てきました。入管法(注1)は「やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しない」と定め、「短期滞在ビザ」からの在留資格変更を原則として認めていないにも関わらず、「やむを得ない特別の事情として認められるかもしれないよ」と指導する窓口担当がいるのです。

(注1)出入国管理及び難民認定法
第20条 在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格の変更を受けることができる。
2 前項の規定により在留資格の変更を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の変更を申請しなければならない。
3 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。ただし、短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。

例えば、観光ビザ(短期滞在ビザ・ビザ期限2023年4月13日)で来日していた、ある中国人女性は、日本語学校で日本語を学ぼうと思い立ちましたが、行政書士に相談したところ、「認定申請して、一度、母国に帰国する必要がある」と言われてガッカリ。「中国に帰国しないで、日本に在留し続ける方法はないものか?」と思い悩んでいるうちに、ビザ期限が迫ってきます。

そこで彼女は、思い切って、横浜入管の窓口で相談することにしました。「日本で日本語を勉強したいのだけれど、中国には帰りたくない」と訴えたのです。そうすると、入管窓口の係の人は優しく、入管庁の HP にある「在留資格変更に係る申請書類」(一度帰国する認定申請ではない)のページを指さして、「この資料を整えて持ってくれば受理しますよ」と教えてくれました。何と入管が「正規の方法」ではない「裏技」を指南してくれたのです。「絶対に一度帰国しなければならない」と覚悟していた彼女は感謝感激。

彼女は、入学予定の日本語学校と相談しながら申請書類を作成し、2023年4月3日、入管に提出。なんと、4月18日(早っ、マジかよ)、無事に「短期滞在」から「留学」へと在留資格の変更が許可されました。狂喜乱舞です。彼女は、この一連の流れを中国語の SNS に申請受付票・入管からのハガキ・在留カードの写真付きで投稿したので、この話は、中国人コミュニティで広く知れ渡ることになりました(もっとも、事実関係の真偽は不明です)。SNS では「観光ビザなのに、帰国しなくてもいいなんて知らなかった!」「入管が窓口で教えてくれたんだから、正式な手続なんだね。観光ビザでできるなんてビックリ!」「だったら、まずは観光ビザで来日して、学校に行って選んでから申請すればいいんだね」などというコメントで溢れかえっています。

そのほか、「老親ビザ」というのも、最近流行っています。これは「特定活動」の一種なのですが、「公表=告示」されていない「裏技(告示外の特定活動)」です。このビザは、母国で一人で住んでいる身寄りのない在留外国人の親を、子どもが住んでいる日本で在留できるようにするビザで、「人道上の理由」で特別に認められる場合があります。このビザを薦める業者は「一度許可が出てしまえば、よほどのことがない限り、次回以降の更新でもスムーズに認可されます」と誘ってきます。

ただし、正規の「在留資格」ではないので、海外在住のまま申請することはできません。したがって、このビザを扱っている業者は「まずは、短期滞在で来日してください」と説明します。「短期滞在ビザの発給申請における滞在目的などに、日本で子供と同居して永住するなどと記載するのは基本的にNGです。ですが、老後の生活面を日本で暮らす子供と話し合う、持病の治療などで本国よりも優れた医療サービスを探すなど、その後の日本滞在理由にもつながる内容でまとめましょう」というところまで丁寧に指南している業者もいます。

ある中国人男性は、この「老親ビザ」の存在を知らずに、父が逝去し、独り身になった母親を「短期滞在ビザ(知人訪問・90日)」で日本に呼び寄せました。あっという間に歳月が過ぎ、「もう少し一緒に暮らしたい」と思った中国人男性は、品川にある東京入管の窓口に相談します。そうすると、入管窓口の係の人は優しく、「じつは、老親ビザというのがあって、許可されるのは難しいけれど、この資料を整えて申請すれば、その後も2ヶ月は合法的に在留できますよ(注2)」と教えてくれました。要するに、「裏技」の不許可を前提にした「裏技」を指南してくれたのです。

(注2)出入国管理及び難民認定法
第20条 在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格の変更を受けることができる。
2 前項の規定により在留資格の変更を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の変更を申請しなければならない。
6 第2項の規定による申請があつた場合(30日以下の在留期間を決定されている者から申請があつた場合を除く。)において、その申請の時に当該外国人が有する在留資格に伴う在留期間の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、当該外国人は、その在留期間の満了後も、当該処分がされる時又は従前の在留期間の満了の日から2ヶ月を経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は、引き続き当該在留資格をもつて本邦に在留することができる。

こういう異次元の優しさ(?)を示す入管ですから、NHK の「やさしい猫」で有名になった、日本人と結婚すればもらえる「日本人配偶者ビザ(=日本人の配偶者等)」への在留資格変更に関してはとっても配慮しています。品川にある東京入管には、「短期滞在ビザから「日本人配偶者ビザ」に変更する申請を受け付ける「特別な窓口」があると噂されているほど。

先日会った、ある40代のルーマニア人女性は、子連れ(日本人とのハーフには見えない)だったのですが、「短期滞在ビザ(観光・90日)」で日本に初めてやってきて、「短期滞在ビザ」の更新許可(90日)をもらっていました。入管の HP には、「短期滞在」の「在留期間更新許可申請」について、「原則として、人道上の真にやむを得ない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に認められるものであり、例えば、病気治療する必要がある場合などがこれに当たります」と明記されているのですが、病気のようには見えません。

「どういう理由で更新ができたのですか?」と聞くと、「日本人と住んでいるから」という一言だけ。「結婚したのですか?」と聞くと、「まだ」とだけ答え、後は無言。「入籍する予定はあるのですか?」と重ねて聞くと、「よくわからない。弁護士の先生にそう言えと言われた」とのこと。要するに、入管窓口の係員に「どうも、一緒に暮らしている日本人と結婚して、日本人配偶者ビザを申請する予定があるようだ。不許可にしたのが後で露見して、非人道的とか言われて叩かれるのは嫌だから、取り敢えず許可しちゃえ」と思わせる作戦を授けられたようです。

入管窓口がこんな感じなので、確信犯的な外国人は、「短期滞在ビザ」の有効期限が迫ってもまったく焦りません。上記のような「裏技」や「叩かれないための配慮」があるので、「なんとかなる」とタカを括っているのです。仮に「裏技」がなかったとしても、伝家の宝刀である「難民申請」がありますし、「オーバースティビザ」になるかもしれない。いざとなれば、たった数千円で「偽造在留カード」だって手に入る便利な世の中なのです。「ビザ期限を守れ!」と言ったところで、蛙の面に小便です。

経験豊富なある行政書士は「入管は『口うるさい警察官』ではなく、『合法的なビザ屋』になってしまった」と嘆息していました。「やさしい猫」を視聴した自民党の小野田紀美・参議院議員は、「いい加減にしろよNHK。幸せが奪われたんじゃなくて不法滞在しているからだ。犯罪者を善良な人間のように描いている。これでは詐欺と同じだ」と厳しく指摘していますが、いまや入管は、小野田議員から叱られてしまう外国人が出たりしないように、「不法滞在」にならないための「裏技」を窓口で一生懸命教えているのです。なんなんじゃこりゃ。







【読む・観る・理解を深める】
【不法残留問題①】不法残留する外国人は、年末に10万人を超え、30万人を目指す!
【不法残留問題②】2023年末に不法残留する外国人が10万人に達するのは防げない!
【不法残留問題③】不法残留する外国人は一度増えてしまうとなかなか元に戻らない!
【不法残留問題④】NHKの「やさしい猫」は在留資格制度の枠組を完全に無視している!
【不法残留問題⑤】オーバースティの外国人を収容しようとしない入管に存在意義はない!
【不法残留問題⑥】「やさしい猫軍団」は「オーバースティで収容するな」と騒ぎ立てる!
【不法残留問題⑦】入管は「口うるさい警察官」ではなく「合法的なビザ屋」になってしまった!
【不法残留問題⑧】難民申請を活用すれば「短期滞在ビザ」から「就労ビザ」に変更できる?
【不法残留問題⑨】外国人派遣会社が摘発されないから「短期滞在ビザ」の外国人が増え続ける!
【不法残留問題⑩】不法滞在した親まで在留特別許可を与えるのなら不法残留者は必ず収容せよ!