Douglas MacGregor:プリゴジンは「クーデターではない」と宣言しており、ロシア人の血を流すつもりはなかった。プーチンは、ワグナーを攻撃する気配を見せず、いくつものチェックポイントを防衛することなく、プリゴジンによるモスクワへの道を確保した。これを「乱」と呼ぶか、「クーデタ―」と認定するか、「芝居」と読むかは論者により区々だろうが、ウクライナ軍に対する強硬論を常にぶち上げてきたプリゴジンやワグナーが、ロシア国民から暖かく迎え入れられ、一部から熱狂的に歓迎されたという事実は、プーチンにひとつの決断を迫ることになった。プーチンは、これまでどおり、NATO の介入を回避しながら、じりじりと、しかし着実に、「ウクライナ軍の掃討=非軍事化」を推し進め、「ヨーロッパ諸国を巻き込んだ恒久的で実効的な和平を実現したい」と日夜策を練っているものの、ワグナーに対する無視できないほどの大きな支持に現れているように、ロシア国民は「ロシア軍による圧倒的な勝利」を心から願っている。プーチンは、ロシアのリーダーとして、ロシア国民の願望を無視するわけにはいかない。それが、オデッサの奪取になるのか、キエフの支配になるのかはわからない。いずれにせよ、ロシア軍は、ウクライナに対する決定的な攻撃を仕掛けるだろう。
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