【今後のロシア経済を予測する際の留意点⑤】(2022.6.27)
*「新冷戦」の勃発と「ドル本位制」の終焉
ウクライナの戦場ではロシア軍の勝利がほぼ確定し、ロシアへの経済制裁は、限界があるだけでなく、欧米での物価高という形で制裁に参加している国自身を傷付けています。無論、米英を中心に戦争の継続を望む勢力は、ロシア領であるカリングラードへの鉄道を止めて嫌がらせをするなど、戦況をエスカレートさせる手段を模索していますが、EU内では、好戦的な「ポーランド+バルト3国」と和平派の「仏独伊+ハンガリー等」の間の温度差が大きくなっています。
そんな中、プーチン大統領は、6月17日、サンクトペテルスブルク国際経済フォーラム(SPIEF2022)において講演を行い、西側諸国が支配している「Unipolar World」との訣別を宣言しました(【参考】参照)。これから本格化する「世界中の国々を巻き込んだ経済戦争」=「新冷戦」の宣戦布告と言っても過言ではありません。世界各国は、新しい国際秩序を模索して蠢き始めました。
以前の拙論では、プーチンが仕掛けた「SWIFT 2.0」と「ルーブル金本位制」という布石を解説した上で「多極化する世界(Multipolar)」というビジョンを俯瞰した後、「Alternative Economic Zone(AEZ=代替経済圏)+SWIFT 2.0」に向かう動きが本格化していることを指摘しましたが、「SWIFT 2.0」が稼働し始め、AEZの台頭が時間の問題となっている状況下で、AEZがWEST(西側諸国・西側経済圏)を凌駕する可能性が高くなりましたので、その点を中心に解説します。
1. プーチンによるWESTに対する宣戦布告
6月17日、プーチンは、SPIEF2022における歴史的な演説の中で、「WESTのエリートたちと新たに何かを約束することは不可能になった(It has simply been impossible to reach any new agreements with the West)」と断言しました。この「WESTに対する不信感」は、ロシアが構築を目指している新しい国際秩序の底流で漂い続けることになります。この独白は、「ロシアが描くAEZの仕組みはWESTと協議したり協力することなく独自に創り上げる」というプーチンからの三行半です。WESTと半世紀対峙した「冷戦時代(1945~1991)」に匹敵する期間、仮に孤立したとしても成し遂げるという強い決意を感じます。本稿では、ロシアなどのNon-WESTが、WESTに対抗して「AEZ+SWIFT 2.0」を構築する過程で勃発するNon-WESTとWESTとの経済戦争のことを「新冷戦」と呼びますが、プーチンは「新冷戦を戦い抜く覚悟はできた」と宣言したわけです。
実際、プーチンの演説は「WESTに対する不信感」で満ちており、「After declaring victory in the Cold War, the United States proclaimed itself to be God’s messenger on Earth, without any obligations and only interests which were declared sacred」「The ruling elite of some Western states consider everything a backwater, or their backyard. They still treat them like colonies, and the people living there, like second-class people, because they consider themselves exceptional. If they are exceptional, that means everyone else is second rate」などの文章は怒りではち切れんばかりです。きっと「WESTとの協調は諦めた」という心境なのでしょう。
プーチンが目指すのは、「多極的な成長モデル(a multipolar growth model)」の構築です。彼は、「新しい国際秩序を形成するルールを確立することは強い主権国家の責務だ(It is up to the strong sovereign states, those that do not follow a trajectory imposed by others, to set the rules governing the new world order)」と指摘し、「ロシアは新しい時代において強力な主権国家として行動する(Russia enters this nascent era as a powerful sovereign nation)」ことを宣言しています。
ロシアは、「非友好国」に指定した48ヶ国 ―― アメリカ、カナダ、EU全加盟国(27ヵ国)、イギリス、ウクライナ、モンテネグロ、スイス、アルバニア、アンドラ、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、ノルウェー、サンマリノ、北マケドニア、日本、韓国、オーストラリア、ミクロネシア、ニュージーランド、シンガポール、台湾 ―― とは「今後新たに何か約束することは不可能だ」という大前提の下で、新しい国際秩序を構築することを公言しました。したがって、今後、ロシアがWESTに歩み寄ることは一切ないと見るべきです。
2. AEZが持っている圧倒的な潜在力
ロシア経済の実力を軽視する人は、「GDP の規模が韓国ぐらいしかない小国だ」と蔑みますが、購買力平価(Purchasing Power Parity)で計算した GDP で比較してみると、ロシアの経済規模はドイツに匹敵し、世界の5%を占めます。さらに、GDP の計算においては、第3次産業の付加価値が第1次産業の付加価値よりも高く計上される傾向があるため、その点を修正すれば、ロシアは、ドイツを凌駕し、日本に匹敵するという試算もあります(ブランド物の付加価値は、実際の使用価値に比べれば、過剰評価と見ることが可能)。また、国際取引というベースで捉え直せば、ロシアは15%程度のシェアを持っています。例えば、ロシアは世界最大の原油生産国ではありませんが、世界最大の輸出国です。小麦やニッケル、鉄、プラチナ、魚介類の分野でも同様のポジションを確保しています。
さらに、ロシアと緊密な協力関係にある中国のGDPを、購買力平価で計算した場合は、EU や米国を凌駕して世界最大であり、ロシアと足し合わせれば、2ヶ国だけで世界の30%~35% を占めてしまいます。WESTで暮している人口は13%にすぎませんが、中国とロシアだけで 20% に達します。これにインドとブラジルを足しあげただけで圧倒的な勢力になり、アフリカ諸国などの他の国々が加われば、世界の3分の2を超える潜在力を十分に持っています。.
ロシアを孤立させるつもりだったWESTは、自分自身が世界から孤立してしまいました。BRICS を中心に、中東・アフリカ・中南米が参加し、東南アジアの一部も加わったAEZが台頭するのは時間の問題です。それに気付いたベルルスコーニ元イタリア首相は、「ロシアはWESTから孤立したが、WESTは世界から孤立した(Russia is isolated from the West, but the West is isolated from the whole world)。西側の世界には14億人が暮らしているが、WESTとは異なる世界には64億人が暮らしている。中国・インド・ロシアだけでなく、アジアやアフリカの各国や中南米の国々はWESTではない」と喝破しました。国連加盟国は193ヵ国ですが、「非友好国」の48ヶ国を除いた145ヵ国は、ロシアに対する経済制裁に参加していません。日本メディアが「世界」と表現するWESTは世界の25%に過ぎず、ロシアの周辺には、世界の75%の国々が集っています。
3. WESTへの怒りを背景にしたAEZの成長力
多くの国々は、ベトナム戦争におけるトンキン湾事件やイラク戦争における「大量破壊兵器」など、WESTが虚偽の事実を捏造し他国を陥れて、違法に侵略してきた歴史をハッキリと覚えています。そして、「なぜWESTは他国をいきなり攻撃しても許されるのか」「なぜ他国の市民を残殺してもWESTは非難されないのか」という「WESTの偽善とダブルスタンダード」への怒りを共有しています。プーチンも演説で、ユーゴスラビア・シリア・リビア・イラクを挙げ、「もしも、言うことを聞かない国を押さえつけたり、なだめたりできない場合、WESTはその国を孤立させ、その存在自体を否定しようとする(If some “rebel” state cannot be suppressed or pacified, they try to isolate that state, or “cancel” it)」と語りました。プーチンのこの発言に深く頷いた国は少なくなかったはずです。
「WESTの偽善とダブルスタンダード」の犠牲になった国々の悲劇を忘れていない中東・中南米・アフリカの諸国は、「Unipolar」ではなく、「Multipolar」を選択しました。中南米における米国の支配力は脆弱化しており、「米国による一極支配(Unipolar)」は「終わりの始まり」のフェイズに入っています。
象徴的だったのは、米国がキューバ・ベネズエラ・ニカラグアを招待しないことに反発して、メキシコ大統領が6月8日から開催された米州首脳会議に欠席した事件です。さらにメキシコ大統領は、6月13日、「ウクライナに兵器を送るのは不道徳だ。ウクライナ戦争は避けられた」とまで公言しました。米国主導で1951年に発足した「米州機構(OAS)」については、「米国が中南米に介入する道具」という見方があり、OASに対抗するため、中南米諸国は2011年に、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)を設立してもいます(CELACには中国が強く関与)。そういう状況下、南米における重要な米国の拠点であるコロンビアで、6月19日に左派の大統領が初めて誕生しました。グスタボ・ペトロ新大統領は、6月23日に、米国と折り合いが悪いベネズエラとの国境を再開する方向で検討を始めており、従来の親米路線を転換する可能性が出てきました。
Unipolarが揺らいでいく中で、AEZは、大方の人々の予想以上に早い速度で成長する可能性があります。というのは、イランやベネズエラ、ミャンマー、北朝鮮など、すでに「WESTから排除されている国々」が喜んで参加してくるからです。BRICS だけでも十分に大きな経済圏なのに、それらの国々が参加し、さらに中南米・アフリカ・中東・東南アジアが加われば、WESTの比ではありません。ロシアは、6月23日にイランとの協力強化で一致するなど、イランに対する経済制裁を解除する方向で動き出しました。近年、長期的な提携関係を結んだイランとベネズエラは、ロシアが開発したMIR Payment Systemの活用を検討していますし、フィリピンは「SPFS-CIPS」の活用を検討することを公表しました。さらに、BRICSは、通貨バスケットに基づく準備通貨の開発についても着手しています。AEZは、「SWIFT 2.0(=SWIFT外取引)」の広がりとともに、着実に裾野を広げています。世界全体から見ればマイノリティにすぎないWESTは、「世界のすべて」を支配できると勘違いして驕ってしまったようです。Non-WESTの国々は「WESTの偽善やダブルスタンダード」に呆れ果てて、ロシアが掲げるAEZという「新たな国際秩序」への参加を真剣に検討しています。
4. 上海協力機構と「BRICS+」というインフラ
2001年からロシアと中国が着実に育ててきた上海協力機構は、AEZの構築において、これから重要な役割を果たすことになると思われます。上海協力機構は、中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8か国による多国間協力組織で、「テロリズム、分離主義、過激主義」に対する共同対処の他、経済や文化など幅広い分野での協力強化を図っており、加盟国による実業家委員会や銀行連合体などが設置されています。
上海協力機構の領域は、ユーラシア大陸の5分の3に達し、加盟国の総人口は30億人を超える規模で世界人口の半分近くを占めています。面積と人口では世界最大の地域協力組織です。正規加盟国8ヶ国のほかに、オブザーバー(イラン、モンゴル、ベラルーシ、アフガニスタン)、対話パートナー(スリランカ、トルコ、アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール)、対話パートナー参加予定国(エジプト、カタール、サウジアラビア)、参加申請国(バングラデシュ、モルディブ、イスラエル、シリア、イラク、バーレーン)という資格を設けており、これからAEZに参加する国々を多く含んでいます。
ちなみに、6月11日、ロシア下院のヴォロディン議長は、「新G8」というコンセプトを提唱しました。「米国は、ロシアに対する経済制裁などによって『新G8』を結成するための環境を醸成してしまった」と主張するヴォロディン議長は、「新G8」として、中国・インド・ロシア・インドネシア・ブラジル・トルコ・メキシコ・イラン」を挙げました。そして、「新G8」の実質的なGDPは、「G7」を24.4%も上回っていることを例示したのです。つまり、「新G8」が「G7」を超え得るように、AEZもWESTを凌駕する可能性は十分にあるのです。
6月23日に開幕したBRICSサミットは、2017年から「BRICS+」と称して、非BRICS構成国も招聘しています。今回ホスト国の中国は13ヶ国(アルゼンチン《正式加盟希望を表明》、アルジェリア、エジプト、インドネシア、イラン、カザフスタン、セネガル、ウズベキスタン、カンボジア、エチオピア、フィジィ、マレーシア、タイ)を招聘しましたが、仮にメキシコ・トルコ・インドネシアを正式加盟させて(上記『新G8』のうちイランと南アフリカを入替)、「BRICS+」を構成した場合、実質的なGDPは、早晩、現在の「G7」を追い抜き、AEZはWEST を凌駕する経済圏となる潜在成長力を誇示するでしょう。
5. ロシア経済の自己修復力と中国の支援
ロシアから外資企業が撤退を始めたときに、「ロシア経済は、外資が撤退して崩壊する」などという言説が飛び回りました。しかし、ロシアの地場企業にとって、ブランド力がある大資本の外資の撤退は、奪われてきた国内市場を奪回する絶好の大チャンスです。飲食や小売のようなサービス業に関しては、あっという間に「外資が抜けた穴」が埋められていくでしょう。製造業は、サービス業と比べれば、多少時間はかかるものの、「外資並みの高品質・高価格」というカテゴリーではなく、「ロシア国民が納得できる品質と価格」という戦略であれば、外資が抜けた工場を安く再活用できる。自然に雇用も増えていくと思われます。
ロシアの製造業に関しては、「電子部品を作れないからダメになる」などと蔑んだ発言が目立っていますが、「宇宙基地を設営してロケットで定期的に往来するという日本にはない技術を持っている国だ」という厳然たる事実を忘れています。しかも、製造業については、中国が万難を排して支援するでしょう。ロシアは、中国にとって、原油の最大供給先となりました。中国は、世界有数の技術水準と世界一の製造能力を持っています。その中国がロシアをフルサポートしているのですから、「ロシアの製造業は、電子部品が調達できないので破綻する」などという見方は、現実を直視しない戯言だというしかありません。
「SPIEF2022」におけるプーチン演説の直後に、中国国家主席の習近平はビデオ・メッセージを寄せて、「デカップリング(経済の切り離し)、供給削減、一方的な制裁、極度の圧力を放棄し、貿易障壁を取り除き、世界の産業とサプライチェーンの安定を維持し、協力して対処する必要がある」と述べ、ロシアに対する経済制裁を批判しました。というのは、中国自身も米国から様々な制裁を受けた経験があり、「なぜ米国にだけ他国を一方的に制裁する権限があるのか」「なぜWESTはそれに追随するのか」という不満を持っているからです。そういう思いを持つ中国がロシアに接近するのは当然の流れ。したがって、「中国が製造できるもの」や「中国が輸入できるもの」については、ロシアはすべからく入手できると想定すべきであり、ロシア経済が崩壊する可能性は事実上消えました。
上記の要因をすべて踏まえた上で現状を俯瞰すると、ロシア経済には、極めて魅力的な未曽有の起業チャンスが訪れていることに気付きます。外資系ブランド企業は、潜在的なシーズに過ぎなかったロシアの国内需要を、顕在的なニーズにまで昇華させ、ロシア人の財布のひもを緩める努力までしてくれました(ビジネスを0から100に育てる過程)。シーズを探し当て掘り起こしてビジネスのレベルにまで仕上げる(ビジネスを0から20に育てる過程:ここは、社会主義経済の一番苦手な分野です)のは博打に近い至難の業ですが、顕在化しているニーズに焦点を当てて品質と価格のストライクゾーンを突き詰めるのは、決して超えられないハードルではありません(ビジネスを20から100に育てる過程)。
マクドナルドをリニューアルして再開した店舗に並ぶロシア人たちの長い行列と驚くべき熱狂を見ると、国内需要の旺盛さを感じます。無論、このような異常な行列が毎日続くわけではないでしょうが、それはロシアで閉店する前のマクドナルドも同じでした。大事なことは、マクドナルドによって開拓された巨大な国内市場がすでにあり、潜在的な大量の顧客が「マクドナルドを代替する供給者」を「今か今かと待っている」という実態があるということです。
しかも、撤退した外資系企業がすぐにロシアに戻ってくる気配はなく、しばらくは、ロシア企業同士の戦いだけです。かつてのオリガルヒのような独占的な超大企業にはなれなくても、地元の名士になれるチャンスは至る所に転がっています。しかも、プーチンは、今回、起業を大々的に促進する改革を断行しました。商売っ気のあるロシア人にはたまらない時代です。「外資の撤退=経済の衰退」としか捉えられないエコノミストは、活きた経済メカニズムを知らないのです。
6. ルーブル金本位制の下における経済正常化
このような状況下、ロシアが導入した独特の「ルーブル金本位制」は極めて効果的に機能しています。30%もディスカウントされたロシア産のエネルギーを買うためには、ルーブルか金塊で支払うことが必要ですから、ルーブルを扱わない輸入業者は、金塊をロシアに与え続けなければなりません。この取引が急増しているので、結果的に市中からは、金塊の現物が品薄になっていきます。そういう中で、ショートポジションを持っている業者は、油断するとすぐに締め上げられてしまうのでなかなか売りを仕掛けられません。ロシア中央銀行は、巧みに金塊とルーブルの関係を調整しながら、ルーブルの価値を維持しています。
ロシア産エネルギーと金塊の裁定取引の下で構築されている「ルーブル金本位制」のメカニズムを理解していない素人は、未だに「高くなっているルーブルの価値は、過剰な規制で人工的に維持されている」と解説していますが、市場参加者の多くは、金塊にソフトペッグした「ルーブル金本位制」に埋め込まれたメカニズムに気付いています。「金本位制」の後を継いだ「ドル本位制」が「コモディティ・ベース・カレンシー」に変わるのではないか、という市場の期待(Bretton Woods Ⅲ)がどんどん膨らんでいる中で、上記のメカニズムに気付いている市場参加者の意識は、豊かな資源をバックに持つ国の通貨に向かっています。そういう状況の中で、世界有数の金産出国であるロシアは、ルーブルと金塊との兌換を仄めかしている分だけ、他の通貨よりも強さを示しているわけです。
ロシア中央銀行は、WESTによる経済制裁を契機に急落したルーブルを防衛するために、基準金利を9.5%から20%に引き上げました(2/28)が、「ルーブル金本位制」でルーブルが安定化したので、17%(4/11)、14%(5/4)、11%(5/27)と引き下げ、6月10日には9.5%に戻しました。短期での思い切った利下げにもかかわらず、ルーブルは高値安定しています。予想以上にルーブルが強すぎるために、ロシア中央銀行がルーブル売りの介入をしたと噂されるほどです。ドルに換えて蓄えるのが習い性だったロシア市民もルーブルに乗り換え始めました。
強いルーブル相場を背景に、ロシア国内の物価も落ち着きました。消費者物価の前週比は、▲0.02%(5/14~5/20)→±0.00%(5/21~5/27)→▲0.01%(5/28~6/3)→▲0.14%(6/4~6/10)→▲0.12%(6/11~6/17)と推移しており、年初からの上昇率は+11.51%とまだ高いものの、上昇テンポは明らかに鈍化しています。こうした状況下、6月15日、ロシアのレシェトニコフ経済発展相は、「ロシアのインフレは明らかに予想よりも低水準になる。5月の統計で景気の落ち込み幅が想定よりも小さい可能性は十分にある」と指摘し、景気後退は従来想定されていたよりも深刻ではない可能性があるとの見方を示しました。
波乱万丈の金融政策を担ってきたロシア中央銀行も、ルーブルの強さとロシア経済の強靭さには驚いています。6月10日の公表文書は「Economic activity. High-frequency indicators point to a halt in the decline in business activity in May after it dropped sharply in April. At the same time, trends across sectors were mixed」という抑制した書き方になっていますが、総裁会見では「良すぎてビックリしている(too good to be true)」というニュアンスで発言しています。
7. 「排除するWEST」を包摂するAEZ
プーチンの演説があった「SPIEF2022」は、例年140ヵ国ほどが参加しているイベントですが、今年はロシアに対する批判が強かったにもかかわらず127ヶ国も参加しました。つまり、1割程度しか減っていないのです。じつは、在ロシア米国商工会議所の会員向けアンケート(2022年5月実施)では、回答企業の85%がロシア市場に残留する意向ですし、イタリア在ロシア商工会議所の会頭も「ロシア市場から撤退したイタリア企業は極めて少ない」と認めています。ビジネス界は、自国の政界の意向とは異なり、ウクライナ戦況の決着を眺めつつ、ロシアとの取引を再開できるようにするための準備に余念がありません。
その点は、じつは日本企業も同じであり、JETROの調査では、ロシアに進出している日系企業のうち、現地からの撤退を表明したのは全体のわずか4%にとどまっています。残る96%の企業は規模を縮小するなどしても撤退せず、残留する意向のようです。帝国データバンクがロシアに進出する日本の上場企業168社を対象に5月に行った調査でも、「完全撤退」を表明したのは3社だけでした。メディアの印象とは異なり、ロシア市場を見棄てる日本企業は少数派と言ってよいでしょう。ちなみに、セントぺテルスブルク当局は、「Nissan, Hyundai & Toyota Factories to Resume Work in Russia When Supply Chains Restored」と公言しており、トヨタや日産もロシアに残る可能性が高いと見られています。
プーチンは「SPIEF2022」の演説の中で、今後施行する経済政策の内容についても詳細に語っているのですが、主要原則として、①Openness、②Entrepreneurial freedom、③Responsible and well-balanced macroeconomic policy、④Social justice、⑤Prioritising the development of infrastructure、⑥Genuine technological sovereigntyの6点を掲げました。主要原則の中で「Openness」を筆頭に掲げる以上、西側企業に対してもオープンに応対するのは当然であり、プーチンは「We will certainly continue to cooperate with Western companies that have remained in the Russian market despite the unprecedented arm-twisting – such companies exist」と明言しています。つまり、AEZは「経済制裁をするWEST」とは異なり、「経済制裁をしないOpenness」を原則とすることを明言したわけです。
したがって、AEZに参加したからと言って、参加国はWESTとの関係を断つ必要がありません。つまり、AEZは「誰にでも常に開かれたマーケット」であり、「WESTから排除された国々をも包含する器」として、AEZの中における新しい国際秩序を提供することになります。「排除するWEST」に対して「包摂するAEZ」という重層構造になるわけで、「中央集権的なWEST」とは異なり「分散分権的なAEZ」は、「WESTから排除された国々のセーフティネット」として機能するようになります。したがって、「新冷戦」はかつての「冷戦」のような対立構造ではなく、「WEST=AEZの大海に浮かぶ孤島」という図式になるでしょう。じつは、6月23日に、習近平は、「公正と正義の声を上げ、国際社会における真の多国間主義の実践を推進し、冷戦思考とブロック対立を捨て、一方的で乱暴な制裁に反対し、人類運命共同体の『大きな家族』を利用して覇権主義の『小さな円』を超越する」と宣言しています。すなわち、WESTの「小さな円」は、AEZという「大きな家族」の一部として包摂されると明言したわけです。
重層構造を形成するWESTとAEZを実務的に峻別するのは、「排除するSWIFT(WEST)」と「排除しないSPFS-CIPS(AEZ)」という決済システムのどちらを利用するのかという点に収斂するのかもしれません。もっとも「Openness」を標榜するAEZは、SWIFTの利用を排除しないでしょうし、インドのSFMSなど他の決済インフラも排除しないでしょう。どの決済システムを使うかは各国の自由です。その中で、「SWIFT」と「SWIFT2.0」の戦いが激化していきます。プーチンは演説の中で「payment in national currencies」の重要性を説いていますが、上記の戦いは、「ドル決済を主体にしたSWIFT」と「自国通貨決済を主体にしたSWIFT 2.0」の戦いでもあります。今後AEZは、決済システムにとどまらず、債券市場や資本市場、法制度や司法手続などを整備し、資金決済だけでなく、資金調達の場や資金運用の場を提供していくようになるはずです。
米国が仕掛けた「ドル建てロシア国債のデフォルト」は、ドル本位制と米国市場に致命的なダメージを与えました。①元利金を支払う予定の資金であった中央銀行の預金を違法に封鎖し、②違法な預金封鎖によって、市場参加者を意図的にデフォルトさせ、③そのデフォルトの結果、市場参加者は資本市場から締め出した、という事実があります。こういう野蛮で暴力的な資本市場で資金調達しようと考える市場参加者はいません。逆に言えば、AEZにとって、いまは米国資本市場に対抗する債券市場や資本市場を立ち上げる好機でもあるわけです。
8. 「ドル本位制」の終焉のはじまり
ロシア経済は崩壊するどころか、正常化への道を堅調に歩んでいます。ルーブル相場は安定し、外資系企業の大半はロシアに留まります。経済制裁をされているロシアの経済は復調傾向ですが、制裁している欧米はインフレで経済や社会が痛んできています。そんな中で、AEZが台頭してWESTを凌駕し、SWIFT以外の決済インフラが活用されて、自国通貨での決済が主体となっていけば、間違いなく、現在の「ドル本位制」は大きく揺らぎます。原油取引をドル建てとするペトロダラー体制は、大方の予想を超えて、早い時期に崩壊へと向かうでしょう。
プーチンは演説の中で、ドルやユーロによる決済の安全性に疑問を投げかけ、毎年確実に減価しているという事実を指摘した上で、「米国がある国が気に入らないと思えば、没収されたり盗まれたりするのだ(they can be confiscated or stolen any time if the United States dislikes something in the policy of the states involved)」と強く警告しています。米国が「FRBにおけるドル預金の凍結」という禁じ手を断行したことは大失策でした。世界で最も流動性が高いはずのFRBのドル預金が時の権力者の気紛れで消失してしまうのなら、ドル預金を喜んで持とうとする人たちは間違いなく減ります。リスクマネジメント上、ポートフォリオにおけるドル資産の比率を下げるプレーヤーは確実に増えるでしょう。
「ドル本位制」は、①米国はドルを刷れば何でも買える、②ドルを保有している国や企業は米国債などのドル建て金融資産を保有するしかない、③米国は財政赤字があってもファイナンスができる、という「米国を有利にする構造」を有しています。逆に言えば、「ドル本位制」が崩れたら、①ドルを刷ってもモノを売ってくれないかもしれない、②ドル建ての金融資産も買ってくれないかもしれない、③財政赤字になったらファイナンスできないかもしれない、ということを意味するわけです。したがって、「ドル本位制」の崩壊は、核ミサイルを投下されたに等しい大打撃を米国の財政と経済と社会に与えます。
その意味で、プーチンが仕掛けている「AEZ+SWIFT2.0」という反撃は、「ドル本位制」の崩壊を狙う本格的な「経済戦争」なのです。世界のすべての国を巻き込んだ本当の「新冷戦」はこれから本格化します。ただし、この「新冷戦」は、WEST と AEZ との交易自体を禁ずるものではありません。AEZ に入っても、WEST との交易が絶たれるわけではないので、AEZに参加することにデメリットは何もありません。逆にAEZは、万が一「WESTから排除された場合のセーフティネット」を提供してくれるので、雪崩のようにAEZに参加する国々が急増する可能性すらあります。ベルルスコーニ元伊首相が予言したように、「WEST 14億人」vs「AEZ 64億人」という構図に向かっていく中で、世界の8割の人口がSWIFT以外の決済システムにおいて自国通貨で決済するとき、米国がどんなに足掻こうが、現在のような「ドル本位制」を維持できないことは明らかです。
「ドル本位制」が崩壊すれば、米国はこれまでのような放漫財政ができなくなり、過大な対外債務を維持することも困難になります。そうなれば、軍産共同体が依拠してきた「米国政府による巨額の軍事支出」を毎年垂れ流すことも不可能になっていくでしょう。とはいえ、各国の首脳に対してすら陰に陽に権力を揮ってきた軍産複合体は、そのリスクを十分に認識しているはずです。バイデン政権を使って、各国が AEZ に入ろうとする動きを、手を変え品を変え何とか邪魔をしようとするに違いありません。したがって、これから WEST と AEZ による「国盗り合戦」が本格化します。とはいえ、じつは、本当の関ヶ原は、中南米でもアフリカでも中東でもありません。最重要な争奪戦は、EUに属している欧州大陸諸国になります。万が一にでも、欧州大陸諸国が AEZ に入れることになれば、「ドル本位制」の終焉は数年もかからずに現実化することになるからです。
9. 米英・仏独伊の反目と日本がとるべき立場
以上の背景を理解した上で、6月17日における仏独伊3首脳のキエフ訪問を眺めると大いに興味がそそられます。というのは、仏独伊は、ゼレンスキー大統領に対して和平協定のための交渉の席に着くことを強く要求したはずだからです。ところが直後に、バイデン政権の意を受けたボリス・ジョンソン英首相が電撃的にキエフに再訪して、ゼレンスキーに和平に応じないように釘を刺したわけですから、仏独伊にすれば思いっきり顔に泥を塗られたことになります。欧州大陸では、国民世論が「正義よりも平和」「戦争よりも物価」にシフトしているので、「継戦よりも和平」に転換したいのが3首脳の本音。そのための訪問だったのに、英米にぶち壊されたのですから怒り心頭。大義名分さえ整えば、仏独伊がロシアに対する経済制裁から離脱して AEZ に参加する可能性すら出てきました。
欧州では戦争反対の世論が湧き起こっており、イタリアでは最大与党がウクライナへの武器送付を巡って分裂(6/21)。仏独伊は、戦争を継続したい好戦的な「米英+ポーランド+バルト3国」から距離をとり始めました。ベルギーでは物価高に怒った市民7万人がデモを行い(6/20)、対ロシア強硬派で知られたブルガリアの現政権は半年で瓦解しました(6/22)。不信任投票が4割を超えた英国のジョンソン政権も基盤が揺らいでいます(6/6)。経済制裁は「自分で自分の首を絞めている(EU is shooting itself in the foot)」だけだという評価が固まる中で、市民たちは「物価高による生活苦を何とかしろ!」と騒ぎ出しています。
「ロシア敵視で一枚岩」という構図に亀裂が入ってくれば、ロシアに対する経済制裁についても、見直しの機運が高まってきます。5月末、プーチンは仏独伊の首脳に対して、「貴国がウクライナに兵器を送り続け、ロシアに対する経済制裁を続けるならば、①ウクライナの領土はどんどん少なくなり、②エネルギーと食糧の値段は上がり続け、③ウクライナ避難民は、貴国で増え続ける。もし、この状況を変えたいのであれば、ウクライナに兵器を送ることを止め、ロシアに対する経済制裁を止めればよい。そうすれば、①ウクライナの領土減少は止まり、②エネルギーと食糧が供給されるようになり、③ウクライナ避難民は自国に帰り始める。どうする?」という提案を行っています。戦争が継続することも、エスカレーションするのも嫌な仏独伊は、打開策を密かに練っているはずです。
米英は、軍事的にも経済的にもミスを重ねました。このため、「Unipolar」から「Multipolar」への流れは止められない情勢になっています。その一方、「SWIFT 2.0」は本格的に稼働し始めており、AEZはものすごい勢いで拡大しつつあります。万が一にも、仏独伊がAEZに参加することになれば、米英は孤立してしまいます。俯瞰して見れば、すでに「WEST=AEZの大海に浮かぶ孤島」という構図は形を整えつつありますが、「AEZはWESTから排除された国のセーフティネットだ」という認識が世界中で広まれば、WESTの経済制裁を恐れる国はどんどん少なくなり、その一方でAEZへの参加国がどんどん増えていくでしょう。
非資源国である日本が、万が一「WESTという孤島」の中で世界から孤立してしまうと国際的に極めて脆弱な立場に陥ります。その一方、6月23日、ガルージン駐日ロシア大使は「日本が非友好的な政策をやめれば、ロシアは日本との現実的な協力に前向きであり続けるだろう」と語っており、日本にはAEZへとつながる扉が開いています。したがって日本は、米英とともに全世界から孤立するリスクを回避し、将来においてAEZと米英を仲介することができる立場を勝ち取るべきです。したたかにかつ巧みに外交戦略を展開すべきときが来ています。
【参考】「SPIEF2022」におけるプーチンの演説内容(抜粋・意訳)
―― 英文は、ロシア大統領府(President of Russia)が公表したTranscripts
The era of a unipolar world order has come to an end. There is no way around it. This era has ended despite all the attempts to maintain and preserve it at all costs. Change is a natural process of history, as it is difficult to reconcile the diversity of civilisations and the richness of cultures on the planet with political, economic or other stereotypes – these do not work here, they are imposed by one centre in a rough and no-compromise manner. After declaring victory in the Cold War, the United States proclaimed itself to be God’s messenger on Earth, without any obligations and only interests which were declared sacred. They seem to ignore the fact that in the past decades, new powerful and increasingly assertive centres have been formed. Each of them develops its own political system and public institutions according to its own model of economic growth and, naturally, has the right to protect them and to secure national sovereignty.
―― 一極支配の時代は終わった。終わりを避ける方法はない。一極支配を維持するために、あらゆるコストをかけて様々な方法が講じられたが、無駄だった。変化は自然な道程であり、地球上で展開している多様多彩で豊かな文化を、政治的・経済的に画一的な型に当てはめることはそもそも難しい。標準化や画一化は機能しない。しかし、これまでは一極支配の下で、粗野で容赦ないやり方で強制されてきた。冷戦の勝者となった米国は、自らを神に遣わされた伝道師として振る舞った。しかし、本来果たすべき義務を果たさず、自分自身の利益をあたかも如何なる場合も否定されない神聖なものとして追い求めた。そして、近年新たに登場してきた国々があるにもかかわらず、米国は無視してきた。しかし、それらの国々は、経済の発展に伴い、独自の政治システムと公的機関を高度化させており、当然のこととして、独自のシステムと自らの国家主権を守る権利を持っている。しかし、米国はその事実を無視しているように見える。
The ruling elite of some Western states seem to believe that the dominance of the West in global politics and the economy is an unchanging, eternal value. Nothing lasts forever. Our colleagues are not just denying reality. They are trying to reverse the course of history. The Western states seem to think in terms of the past century. They consider everything a backwater, or their backyard. They still treat them like colonies, and the people living there, like second-class people, because they consider themselves exceptional. If they are exceptional, that means everyone else is second rate. The irrepressible urge to punish, to economically crush anyone who does not fit with the mainstream, does not want to blindly obey. Moreover, they crudely and shamelessly impose their ethics, their views on culture and ideas about history, sometimes questioning the sovereignty and integrity of states, and threatening their very existence. Suffice it to recall what happened in Yugoslavia, Syria, Libya and Iraq. If some “rebel” state cannot be suppressed or pacified, they try to isolate that state, or “cancel” it. Everything goes, even sports, the Olympics, bans on culture and art masterpieces just because their creators come from the “wrong” country.
―― 支配層である西側のエリートは「西側による世界支配は今後揺らぐことはなく永遠に続く」と思っているが、永遠に続くものなどない。私たちは「西側支配が続く」という事実を否定しているだけではなく、歴史の行先を変えようとしているのだ。西側諸国は、過去の時代で生きている感じだ。彼ら以外の国は、すべて遅れた地域だとみなしている。西側は自分たちを特別だと思っているから、他の国々を植民地のように扱っており、その国々で暮している人たちを二級市民と見なしている。彼らが「特別」だとすれば、他は「二流」なのだ。彼らは、抑制することができない衝動で、西側において主流の考え方を否定し、盲目的に従うことを拒否する者たちを罰して、経済的に破壊する。それだけにとどまらず、国家主権や国家としての統一性にケチを付け、国家の存在すらも脅かしながら、野蛮で恥知らずにも彼らの倫理や彼らから観た文化観や歴史観を押し付けてくる。ユーゴスラビアやシリアやリビアやイラクで起こったことを思い出せば、否が応でもわかるだろう。もしも、言うことを聞かない国を押さえつけたり、なだめたりできない場合、西側はその国を孤立させ、その存在自体を否定しようとする。すべてから排除するのだ。その「反逆国」はオリンピックから締め出され、その国の文化や美術の傑作ですら禁止される。
The economic blitzkrieg against Russia was doomed to fail from the beginning. Sanctions as a weapon have proved in recent years to be a double-edged sword damaging their advocates and architects. We know that European leaders informally discuss the very concerning possibility of sanctions being levelled not at Russia, but at any undesirable nation, and ultimately anyone including the EU and European companies. So far this is not the case, but European politicians have already dealt their economies a serious blow all by themselves. We see social and economic problems worsening in Europe, and in the US as well.
―― ロシアに対する経済制裁は、最初から失敗する運命にあった。経済制裁は、近年「他国を傷付ける兵器」として用いられるが、この「兵器」は「両刃の刃」で経済制裁する国も傷付ける。対ロシアに限らず、欧州諸国の首脳たちは、気に入らない国があると「経済制裁してやろう」というコソコソ話をしている。それが、誰だっていいのだ。EUメンバー国であっても、ヨーロッパ企業であっても、気に入らなければ制裁する。そういう愚かなことをしている欧州の政治家たちは、結局自分たちの経済を、自分たち自身で痛めつけている。だから、欧州では社会問題と経済問題が深刻化している。米国も同じだ。
Under the cloud of inflation, many developing nations are asking why exchange goods for dollars and euros that are losing value right before our eyes? The economy of mythical entities is inevitably being replaced by the economy of real values and assets. Global currency reserves are at $7.1 trillion and 2.5 trillion euros now. These reserves are devalued at an annual rate of about 8 percent. Moreover, they can be confiscated or stolen any time if the United States dislikes something in the policy of the states involved. This has become a very real threat for many countries that keep their gold and foreign exchange reserves in these currencies. A conversion of global reserves will begin just because there is no room for them with such shortages. They will be converted from weakening currencies into real resources like food, energy commodities and other raw materials. Other countries will be doing this. Obviously, this process will further fuel global dollar inflation.
―― インフレーションが広がる中、多くの国は、「どうして減価する一方のドルやユーロで貿易決済をしなければならないのか?」という疑問を持つようになった。これまでの「神話の世界の経済」は、「本物の価値や資産の経済」によって、置き換わらざるを得ないだろう。国際的な通貨準備高を見ると、ドル建ては7.1兆ドルもあるし、ユーロ建ては2.5兆ユーロもある。しかし、これらの資産価値は毎年8%も減価している。それどころか、米国がある国が気に入らないと思えば、没収されたり盗まれたりするのだ。これは、ドルやユーロで外貨準備を持っている国にとっては、本物の「危険」になっている。国際的な通貨準備の見直しが始まっている。というのは、従来の方法では、現在の国際通貨システムが抱えている構造的な欠陥から逃れることができないからだ。これからは、弱い通貨から、食糧・エネルギーなどの実物資産へと収斂されていく。多くの国は、その流れに対応し始めた。そして、その流れは、ドルの減価と相まって、グローバルなインフレーションを引き起こしていくだろう。
The world is going through an era of drastic change. International institutions are breaking down and faltering. Security guarantees are being devalued. The West has made a point of refusing to honour its earlier commitments. It has simply been impossible to reach any new agreements with them. Given these circumstances and against the backdrop of mounting risks and threats, Russia was forced to go ahead with the special military operation. No doubt, our special military operation goals will be fulfilled. Sovereignty cannot be segmented or fragmented in the 21st century. The components of sovereignty are equally important, and they reinvigorate and complement each other. So, what matters to us is not only the defence of our political sovereignty and national identity, but also strengthening everything that determines our country’s economic, financial, professional and technological independence.
―― 世界は今、劇的に変化しようとしている。現在の国際的な組織は役に立たず色褪せており、安全保障の約束は無価値になりつつある。西側のエリートたちは、本来の義務を果たすという栄光に浴することを拒否した。もはや彼らと新たに何かを約束することは不可能になった。この累積するリスクと脅威の中で、ロシアは「特別軍事作戦」を実行せざるを得なくなった。そして、「特別軍事作戦」の目的は間違いなく達成されるだろう。21世紀において国家主権は、分割されたりバラバラにされてよいものではない。国家主権を構成する要素はすべて重要である。それぞれの要素は国家に強さを与え、それぞれを補強する。重要なのは、政治的な主権とか国家としてのアイデンティだけではない。国家の経済・金融・技能・技術の独立性を強化するものはすべて重要だ。
There is an increasingly pronounced trend in favour of a multipolar growth model in lieu of globalisation. We will have to confront many challenges, risks, and factors that we can hardly predict or anticipate today. Still, it is obvious that it is up to the strong sovereign states, those that do not follow a trajectory imposed by others, to set the rules governing the new world order. Only powerful and sovereign states can have their say in this emerging world order. Otherwise, they are doomed to become or remain colonies devoid of any rights. Russia enters this nascent era as a powerful sovereign nation. We will definitely use the new immense opportunities that are opening up for us in this day and age in order to become even stronger.
―― グローバリゼーションの代わりに、多極的な成長モデルにピッタリとくる明確な流れがある。私たちは、多くの挑戦やリスク、そして現時点では予見できない難局を乗り越えていかなければならない。難局を乗り越えて、新しい国際秩序を形成するルールを確立することは、第三者に押し付けられた道を拒むことができる強い主権国家の責務だ。強力な主権を確立した国家だけが、今後の国際秩序に対して発言権がある。そうでない国家は、全ての権利を剥奪された植民地のままで生きるしかない。ロシアは、新しい時代において、強力な主権国家として行動することを宣言する。ロシアは、より強力な主権国家になるために、いま目前に現れている新しい機会をキッチリと活用するだろう。
【読む・観る・理解を深める】
➡【今後のロシア経済を予測する際の留意点①】 プーチンが仕掛ける「SWIFT 2.0」
➡【今後のロシア経済を予測する際の留意点②】プーチンが仕掛ける「ルーブル金本位制」
➡【今後のロシア経済を予測する際の留意点③】「unipolar」vs「multipolar」の戦いの行方
➡【今後のロシア経済を予測する際の留意点④】「AEZ+SWIFT 2.0」が本格的に台頭する
➡【今後のロシア経済を予測する際の留意点⑤】「新冷戦」の勃発と「ドル本位制」の終焉
➡【今後のロシア経済を予測する際の留意点⑥】「WESTの稚拙」vs「BRICSの智略」の勝敗
➡ The Bretton Woods 3:国際金融システムが大変革する!
➡ プーチンと習近平は、ドルを基軸通貨とした国際経済に戦いを挑む?! これは両国にとってチャレンジする価値のある戦いだ!
➡ ペトロダラー体制の崩壊?:これって、マジで「ドル本位制」から「マルチカレンシー制」へと展開したい勢力がかなりいるってことだよね。
➡ 経済制裁でプーチンは失脚しませんよ。キューバを見なさい。イランを見なさい。それが現実です
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