ウクライナ情勢を分析する際の留意点④(2022.5.10)ーー 軍事専門家の分析と偏向報道 ーー

テレビで報道されている内容とは異なり、下記の軍事専門家たちは、「ウクライナ軍は包囲されて苦戦しており、ロシア軍は着実に勝利に向かっている」と分析しています。
・用田和仁(元陸上自衛隊西部方面総監)
・Markus Reisner(現オーストリア参謀大佐)
・Jacques Baud(元スイス情報将校)
・Douglas MacGregor(元米陸軍大佐)
・Scott Ritter(元国連軍事査察官)
・Larry C. Johnson(元CIA アナリスト)
・Max Von Schuler-Kobayashi(元米海兵隊)
・Andrei Manynov(ロシア軍の専門家)

テレビでは、戦勝記念日(5月9日)を殊更にクローズアップし、専門家と自称する人たちが「ロシア軍は5月9日までにドンバス地域を占領するつもりだ」と言ってみたり、「ドンバス地域の占領は無理だから、マリウポリを占拠して勝利宣言するつもりだ」とか「予備兵を全員動員するために戦争宣言するはずだ」などと勝手な憶測を流してきましたが、プーチン大統領やロシア軍幹部がそのような発言を口にしたことはありません。

実際、今から1ヶ月前(4月12日)に行われた記者会見において、「いつこの戦争は終わるのか?」と西側記者から質問されたプーチン大統領は、「私たちの目標を達成したら、この軍事作戦は終わる。もっと早くできないのかとよく聞かれるが、無論、早くすることは可能だ。しかし、そのためには攻撃を強めなければならない。私たちは死傷者を最少にとどめたいと考えているので、終結期限を早めることは考えていない」と言明しています。

ワイドショーの素人コメンテイターであればともかくとして、曲がりなりにも「専門家」であることを自称してテレビに出演しながら、「分析」という名に値しない勝手な「憶測」を垂れ流すのは恥ずかしい限りです。最近では、「憶測」という域にとどまらず、「願望」から派生した「妄想」を語っている輩すらいます。

今回のウクライナ危機において、西側のプロパガンダを鵜呑みにして公に発信していた政治家や自衛隊関係者や軍事専門家たちには、今後一切、日本国の外交や国防に関与させてはなりません。この程度のプロパガンダを見破れないような情報弱者を関与させると、日本国の近未来を危うくします。

武力の衝突において、「正邪」と「好悪」と「勝敗」を峻別せずに実態を把握しようとすれば、「願望」と「憶測」と「分析」の境界線が曖昧になり、実態を正確に認識することが困難になります。残念ながら、ウクライナ危機に関しては、「勝敗」を冷静に分析しているメディアがありません。このため、「分析」と言いながら、「憶測」にすぎない解説や「願望」を示しているだけの論評がほとんどで、プロパガンダが多すぎます。

「ロシア=邪」という「正邪」で戦況を判断すると、「ウクライナ軍は健闘している」という先入観が入り込み、「ロシア嫌い」という「好悪」が実態に関する「憶測」に影響します。そうなると、自分の「願望」を「憶測」に投影してしまうので、戦場における「勝敗」を冷徹に分析することができません。

日本の報道は、大きく歪んでいる西側メディアの劣化コピーにすぎません。4月12日に行われた記者会見の内容すら正確にフォローしていない低レベル。軍事を語る際には「正確な情勢分析」が基本なのに、そういうことを行おうとすれば、「お前はロシアの手先か!」「プーチンからいくらもらっているんだ!」などの罵詈雑言。「お前の母ちゃんでべそ」レベルの議論しかできない日本の実態はお寒い限りです。



 【読む・観る・理解を深める】
【ウクライナ情勢を分析する際の留意点①】プーチンはなぜ侵攻に踏み切ったのか?
【ウクライナ情勢を分析する際の留意点②】米国の思惑とウクライナの実情を知る
【ウクライナ情勢を分析する際の留意点③】ウクライナに駐在した元NATO将校の証言
➡ 
元 CIA の Larry Johnson が自分自身でHPを運営して、ウクライナ情勢について解説しています。極めて詳細な分析なので、大変参考になります。
➡ メインメディアの報道と事実は異なり、すでにウクライナ軍はロシア軍に敗北した???
➡ 軍事専門家 Scott Ritter は「ロシアは情報戦に興味がなく、地上戦での勝利に集中している。西側の情報では実際の戦況はわからないが、ロシアは軍事目標を達成したように見える」と指摘。
➡ 元米陸軍大佐 Douglas McGregor による分析は、米国の主流マスコミとはかなり異なります。MUST WATCH!
➡ ウクライナ危機の歴史・背景・実情に関する解説動画です。ものすごく勉強になります。ロシアのディスインフォーメーションだと断じる人たちこそ、観るべき動画です。
➡ ウクライナを語るのであれば、最低限「オデッサの惨劇」を知っておく必要があります。この事件を知らなければ、今回のロシア侵攻を語る資格はないと思います。