今後のロシア経済を予測する際の留意点(3)
――「unipolar」vs「multipolar」の戦いの行方 ――
留意点(2)で指摘しましたが、武力の衝突でも、経済の闘争でも、「正邪」と「好悪」と「勝敗」を厳密に峻別できなければ、「願望」と「憶測」と「分析」の境界線が曖昧になり、現状を正確に認識することはできません。今回のウクライナ危機に関しては、「正邪」と「好悪」で論じる報道が多く、その情報を基に「勝敗」を分析するのは危険です。ロシアの報道が正しいというつもりは毛頭ありませんが、現在の西側メディアによる報道は大きく歪んでいます。日本の報道は、その西側メディアの劣化コピーなので、まったく当てにならず、「どこを隠蔽しようとしているのか」という点を確認するのに役に立つ程度にすぎません。
詳細に指摘すればキリがありませんが、「アゾフ大隊」や「ネオナチ」の扱いが典型でしょう。多少調べれば、ロシアのみならず、西側の大手マスコミが「アゾフ大隊の残虐性」や「ネオナチの問題」を大々的に批判していた事実は露見するのに隠蔽し、隠蔽できなくなると「アゾフ大隊」を「正規の精鋭部隊」だとホワイトウォッシュ(whitewash)する体たらく。こんな日本の報道を参考にして、ウクライナ情勢を分析すれば判断を誤ることは確実です(西側メディアも同様)。
本稿では、上述した日本メディアの偏向に留意しつつ、「正邪」や「好悪」という側面を排除し、経済の闘争における「勝負」を客観的に「分析」するという観点から、プーチンが米国に対して仕掛けている経済戦争という「勝負」を「分析」します。以前の小論においては、「SWIFT 2.0」と「ルーブル金本位制」に焦点を当てましたが、今回は、それらの戦術を駆使するロシアの戦略の基盤となった「多極化する世界(multipolar world)」というビジョンについて解説します。
1.はじめに
ロシアのプーチン大統領は、2007年2月に、国際法を無視して無制限に軍事力を行使する「米国一極主義」(the US for its striving for a unipolar world)を公に批判する歴史的な演説を行い、「ロシアはそういう国際秩序を甘受しない(Russia does not intend to fit in this kind of world order)」ことを明言しました。すなわち、ロシアは、15年前からすでに、米国が主導する「米国と同じ文化と価値観で統一された一極の世界(unipolar world)」に対抗し、「多様な文化と価値観や伝統・慣習を認める多極化する世界(multipolar world)」というビジョンを打ち出した上で、国家戦略を組み立てて、各種の戦術を実行してきたわけです。
米国の「unipolar」に対し、「multipolar」を掲げるロシアは、一貫して、そのビジョンを実現するための施策を講じ、特にクリミア奪還を契機とした西側からの経済制裁を経験してからは、極めて実務的で具体的な対策を講じてきました。だからこそ、ロシアのラブロフ外相は、最近の記者会見で経済制裁の効果を聞かれて、「そんなの慣れちゃったよ(We are used to it)」と回答できたのでしょう。
この大戦略の下で、4月11日、ロシアのラブロフ外相は、「ロシアは、米国が支配する世界秩序に終止符を打つ(put an end to the reckless expansion and the reckless course toward the total dominance of the United States)」と公言し、5月6日には「いまの世界が問われているのは、『他国が我慢しながら米国一国が支配する世界(unipolar under the full command of the United States as all other Western countries put up with)』なのか、『フェアで民主的な世界(fair and democratic)』なのかという選択だ」と世界に向けて発信しました。日本ではほとんど紹介されない、これらの重要な発言は、他国では大きく報じられています。
そして、5月9日の戦勝記念日、プーチン大統領は「米国は、ソビエト連邦の崩壊後、『自分たちは特別だ』と言い始めた。その結果、全世界のみならず、何も気付かないふりをして従順に従わざるを得なかった同盟国にも屈辱を与えてきた。しかし、我々は違う。ロシアはそのような国ではない。我々は、祖国への愛、信仰と伝統的価値観、先祖代々の慣習、すべての民族と文化への敬意を決して捨てない。欧米は、この千年来の価値観を捨て去ろうとしているようだ」と明言して、改めて米国に宣戦を布告し、米国の同盟国に対して翻意を促しています。
すなわち、現状の世界を大きく俯瞰すれば、米国の文化や価値観で世界を一元化し支配しようとする「unipolar派」(最近流行っている言葉で言えば『グローバリスト』)と、各国の文化や価値観や伝統・慣習を尊重する「multipolar派」(同じく『ナショナリスト』)」に大きく分かれて争っているということになります。そして、今回のウクライナ戦争は、「unipolar派」の米国(+英国)が、「鉄砲玉=駒」であるウクライナに、「multipolar派」の筆頭格であるロシアを挑発させて起こさせた「代理戦争(proxy war)」だとして捉えることができます。
2.「孤立しないロシア」と「孤立する可能性を否定できない英米」
現実を見れば、ロシアを国連人権理事会から脱退させる決議においてすら、反対と棄権を合わせれば、ほぼ同数の賛成しかありませんでした。経済制裁に参加していない国が150ヶ国(制裁参加国の3倍)もあるという現状は、エネルギー危機や食糧不足が表面化すればするほど、ロシアに有利に働くでしょう。また、4月11日に開催されたG20では、ロシアに対する経済制裁については票が真っ二つに割れ、決議することができませんでした(BRICSのほか、サウジアラビア、トルコ、メキシコ、アルゼンチン、インドネシアが反対)。
実際、中東や中南米における報道をチェックすると、西側の報道とは完全に距離を置き、「ロシア悪玉説」に偏ることを慎重に避けています。キエフ郊外(ブチャ)での大量虐殺がロシア軍によるものではない可能性が出てきてからは、明確にロシア寄りに転向したメディアもあり、日本における報道を材料に判断すると、完全に情勢を見誤ります。冷静に判断すれば、いわゆる「西側諸国(日本・台湾・韓国・豪州等を含む)」を除けば、中東・中南米・アフリカの国々のほとんどは、ロシア擁護か反米あるいは是々非々の立場であり、日本や台湾・韓国等を除く東南アジア諸国は西側支持というよりも是々非々という構えでしょう。
拮抗した環境の下で、ロシアが「unipolar」vs「multipolar」の選択というビジョンを世界各国に提示しているという大戦略は注目に値します。この命題を面と向かって突きつけられて、「unipolar」を選択する国は、「西側諸国」以外には見当たりません。中東・中南米・アフリカの諸国は、欧米のダブルスタンダードの犠牲になったイラクやリビアなどの国々の悲劇を忘れていないからです。例えば、ガンビアの代表は、国連でロシア非難決議をする直前に、「Africans do not want to be part of your EU foreign policy」と発言し、大喝采を浴びています。
じつは、西側諸国から経済制裁を受けているはずのロシアは、エネルギー等の輸出で史上最大の貿易黒字を稼ぎ出しています。また、砂糖がなくなってパニックになるなどという噂が乱れ飛んでいた国民生活も比較的安定しており、極端な品不足に陥っているという様子は見られません(砂糖も普通に売られています)。この間、ルーブル下落を抑えるための高金利政策も、景気刺激へと舵取りを変えつつあり、政策金利は2月28日に9.5%から20%に引き上げられた後、4月11日から17%に引き下げられ、5月4日には14%にまで下げられました。
無論、高金利や経済制裁の影響でロシアの景気自体は厳しさを増していくでしょうが、それは、エネルギーや食糧価格のインフレで苦しめられている欧米諸国も同様です。現状を観れば、どちらが経済制裁されているのかわからない状況だと言ってよいでしょう。特に欧州大陸諸国においては、ロシア産天然ガスの供給問題などがあり、国内の財界やエコノミストから「ロシアに対して経済制裁するつもりで、自国の国民を経済制裁している」と突き上げられています。
また、500万人を超えたウクライナ難民は、各国に少なからずいる親ロシア派の住民と小競り合いを展開するなど、頭痛の種となりつつあり、戦争の長期化がもたらすマイナス面として表面化しています。不確定要素が多いため、今後の趨勢を読み切ることはできませんが、今回ウクライナがロシア産天然ガスの欧州供給の3分の1を停止させた(米国の策略という指摘もある)こともあり、世論の展開次第によっては、ロシア制裁に猛進している米英に対して、欧州大陸諸国が距離を置く可能性も否定できません。「NATOやEUは一枚板である」という「仮定」は捨てた上で、各国の動静を慎重に観察すべきだと思われます。
上記の事情をも踏まえた上で大局を俯瞰すれば、BRICSを中核とした経済提携は、中東やアフリカ、中南米・東南アジアの諸国を巻き込み、欧米を除いた「代替経済圏(AEZ=Alternative Economic Zone)」と呼ぶべき極めて巨大な経済圏を成立させる蓋然性はかなり高いと見るべきでしょう。そうなると、今後は、欧州大陸諸国が、米英が主導する「unipolar」にあくまでも追随するのか、それとも「multipolar」のAEZに参加するのかという選択が注目点になります。
じつは、BRICSは、IMFの枠組を真似て、2015年にNew BRICS Development Bankを創設し、準備資産のSDR(Special Drawing Rights)に相当する「CRA(Contingency Reserve Arrangement)」まで構築しています。SFPS-CIPSをベースにBRICSの決済システムを統合していき、「SWIFT 2.0」という完成形を明確に描くことができるようになれば、米英と欧州大陸諸国を分断するために、ロシアが欧州大陸諸国に「AEZ+SWIFT 2.0」への参加を打診するという展開も予想されます。プーチンは、一般に考えられている以上に準備万端です。
3.市場予想を超える「ルーブル」の強さと「Crypto Currency」の暴落
この間、特筆すべき点は、ルーブル相場が市場予想を遥かに超えて強いことです。ロシアに対する経済制裁が始まった当初、80前後(ルーブル/ドル)だったルーブルは、135.8(3/10)まで急落したものの、「ルーブル金本位制」が打ち出されてからは水準訂正が急速に進み、4月上旬には、ロシア軍のウクライナ侵攻以前のレベルに概ね戻りました。直近では、64.9(5/13)まで強くなっており、現時点においては、「世界で最も強い通貨」になっています。このため、ロシアの輸出業者からは、「ルーブルが強すぎる」という苦情が出てきているほどです。
もっとも、ルーブルの強さの背後で目立ちませんが、米ドルの水準も20年来の強さを示しています。2022年入り後、米ドルとの比較で強くなっている通貨は、ルーブル(ロシア)とリアル(ブラジル)とペソ(メキシコ)の3通貨だけで、その他の通貨と比べれば米ドルは最強です。要するに、上記の3ヶ国はすべて資源に恵まれている国(ブラジル:鉄鉱石・大豆、メキシコ:銀・石油)であり、米ドルが強いのも、米国がエネルギーと食糧を自給できるスーパーパワーだから。一方、エネルギーも食糧も自給できない日本の「円」は売られがちです。
つまり、「金本位制」の後を継いだ「ドル本位制」が「コモディティ・ベース・カレンシー」に変わるのではないか、という市場の期待(Bretton Woods Ⅲ)がどんどん膨らんでいる中で、プーチンが仕掛けた「ルーブル金本位制」がルーブルの相場を安定化させているという事実に気付いた投資家たちが、豊かな資源をバックに持つ通貨に一斉に向かっていると見るべきでしょう。そういう状況の中で、世界有数の金産出国であるロシアは、ルーブルと金塊との兌換を仄めかしている分だけ、他の通貨よりも強さを示しているわけです。したがって、世界中でFiat Money(不換紙幣)の価値は相対的に減価していると見るべきです。
ちなみに、Bitcoin に代表される「Crypto Currency」の相場は、現在クラッシュしていますが、その背景については、上記の大きな流れを踏まえて理解すべきです。各国の中央銀行が発行している Fiat Money ですら減価している状況ですから、価値の裏付けのない Crypto Currency が売られるのは致し方ありません。問題は、このトレンドが変わるか否かということですが、ロシアが「ドル本位制に対する戦い=米国一極支配に対する挑戦」の一環として、「ルーブル金本位制」を仕掛けていることに鑑みると、しばらくは続きそうです。このままの情勢が続けば、Crypto Currency のほとんどは、駆逐されてしまうかもしれません。
4.ウクライナ戦争の「実態」と為替ディーラーの「読み」
近未来を予測する際の不確定要素のひとつは、ウクライナ戦争の「勝敗」ですが、冒頭で申し上げたとおり、日本における報道は「大きく歪んだ西側メディアの劣化コピー」なので全く当てになりません。また、西側のメディアも大きく歪んでいるので、それに依拠して情勢判断することもできません。米英の軍事当局者もポジショントークが多すぎて、信頼性が低いのが実情。かと言って、ロシア側の情報を鵜呑みにすることもできず、実態を判断することは極めて困難です。
このため、実務的には、頼りになり得る軍事専門家の解説を詳細に分析して判断するしかありません。経験豊富で分析力が確かな専門家ということで言えば、Markus Reisner(オーストリア陸軍参謀大佐《現役》)、Jacques Baud(元スイス情報将校《NATOに従軍しウクライナで活動》)、Douglas MacGregor(元米陸軍大佐《米国国防総省前アドバイザー・イラク戦争で活躍》)、Scott Ritter(元国連軍事査察官・イラクに大量破壊兵器がないことを立証)、Larry C. Johnson(元CIA アナリスト)、Andrei Martyanov(ロシア軍専門家)のほか、日本では用田和仁(元陸上自衛隊西部方面総監)が参考になりますが、彼らは「ウクライナ軍は敗けている」と分析しており、日本のマスコミ報道とは全く異なっています。
戦場の現場で直接確認できない以上、どちらが事実なのかを確定することはできませんが、少なくとも言えることは、ルーブルを取引している為替ディーラーたちは、日本のマスコミで圧倒的な大多数を占めている「ウクライナ軍は善戦している」「ロシア軍は弱い」という解説を「話半分の半分の半分」くらいで聴き流しているということがわかります。というのは、プーチンが「ルーブル金本位制」を打ち出して、ルーブルが高値で安定する仕組みを如何に巧みに構築したところで、その胴元であるロシアがウクライナに戦争で敗けているのであれば、ロシアの通貨であるルーブルが現在の高値になることなどあり得ないからです。
0.1%の動きで日々勝負している為替ディーラーは、極めて臆病であらゆる情報に敏感であり、彼らは、日本の報道の基になっている西側発の情報を大量に知っているはず。そのほとんどは「ウクライナ軍は善戦している」「ロシア軍は弱い」というものですから、Markus Reisner等に代表される少数意見(In the West, they try not to talk about the obvious advance of the Russian armed forces and the Western media make a lot of efforts to hide the obvious successes of the Russians, which is a serious mistake)は完全に無視されてもおかしくありません。ところが、現実には「ルーブルが予想以上に強い」―― つまり、この事実は、情報に敏感な為替ディーラーたちが、西側が毎日発信している「ウクライナ軍は善戦している」という大本営発表を眉唾で聴き流しているということを意味します。
ロシア軍がオデッサまでをも侵攻対象にしつつある現在、日本では、「ロシア軍はボロボロで、6月からはウクライナ軍が反転攻勢に出る」などという憶測が駆け巡っていますが、もし、Markus Reisner等に代表される少数意見が正しく、「ウクライナ軍は完全に敗けている」のだとすれば、日本メディアが垂れ流している劣化情報を基に判断することは、極めて危険だということになります。
5.「unipolar(ドル一極体制)」から「multipolar(多通貨体制)」へ
プーチンは、極めて長い歳月をかけて、米国と戦うための布石を巧妙かつ広範に打ってきましたし、ロシアは BRICS の会合で数年前から、SWIFT以外の決済システムの必要性を説き、自国通貨での取引の重要性を説いてきました。2年前からは、BRICS諸国において、ロシアの銀行を開設し、実務的で具体的な提案をするに至っています。そして、今年の BRICS 財務大臣会合では、ベネズエラのマドウロ首相をリモートで参加させて、「我が国はドル預金を凍結され、西側の決済システムから排除された。今後、可能になったとしても、西側の決済システムに戻るつもりはない」と講演させるというお膳立てまでしています。
中国が「デジタル人民元」に注力してきたのは、米国による経済制裁の一環で「ドル預金が凍結される」というリスクを本気で恐れていたからであり、1980年代に日本が「経済大国ムード」だけで追求していた「円の国際化」とは覚悟が違います。中国も、ロシアも、そして、米国に敵対する可能性のある国々、もしくは、謂れなき難癖を付けられる蓋然性を恐れる諸国は、ドル預金や米国が支配する決済システムを回避しようとします。皮肉なことに、米国が「unipolar≒ドル一極体制」を維持しようとすればするほど、米ドルを回避しようとするトレンドは強まっていき、「multipolar≒多通貨体制」への流れを加速していくでしょう。
それにしても、米国が経済制裁として「FRBにおけるドル預金の凍結」という禁じ手を断行したことは大失敗でした。実際、バイデン政権は、ロシア中央銀行の前に、アフガニスタン中央銀行のドル資産を凍結し、その半分近くを「9/11同時多発テロ犠牲者遺族の賠償」に充てるという蛮行に及んでいるわけですが、最も流動性が高いはずのFRBのドル預金が時の権力者の気紛れで消失してしまうのであれば、ドル預金を喜んで持とうとする人たちが減るのは当たり前です。
「FRBにおけるドル預金の凍結」という危機を、逆に好機と捉えたロシアは、「ドル本位制の崩壊」というクロスカウンターを放ちました。FRB出身のディーラーであるJoseph Wangは、「FRBにおけるドル預金の凍結」を「金融における大量破壊兵器」と呼び、「主権国家は国家安全保障の問題として、市民は自己防衛の問題として、投資を分散させなければならない」と指摘しています。先述した通り、米国は資源大国なので、ドルの優位性がすぐに消滅することはないでしょうが、リスクマネジメント上、ポートフォリオにおけるドル資産の比率を下げるプレーヤーは間違いなく増えます。少なくとも、原油取引をドル建てとするペトロダラー体制は、遅かれ早かれ、崩壊の道へと向かうでしょう。
6.「日本の国益」からの留意点
ビル・クリントン元大統領が4月7日に公表したエッセー(I Tried to Put Russia on Another Path:The Atlantic)で明言したように、「unipolar」を目指す米国が、各国特有の文化や価値観を否定し、ロシアを米国の文化や価値観で染めたいと考えているのであれば、ウクライナを「駒」とした代理戦争が長期化・泥沼化することは避けられません。世界経済の混乱は、当分の間、収まらないでしょう。
しかも、米英は、ウクライナだけに飽き足らず、フィンランドやスウェーデンをNATOに招き入れて、ロシアとの緊張感をわざと高めています。さらに、5月初に米国務省は、ホームページで「台湾の独立を支持しない」「台湾は中国の一部だ」などの文言を削除して、意図的に中国を挑発しています。つまり、米英は「和平の模索」ではなく、「戦線の拡大」を明らかに志向しているわけです。
こうした「戦線の拡大」を求めるバイデン政権の本心は、①ウクライナ軍が敗けそうだから戦線を拡大したい、②米国内におけるハンター・バイデンやロシア疑惑を有耶無耶にするために世界中で紛争を起こしたい、③産軍複合体からの要請で計算尽くで突っ走っている、のいずれなのはわかりませんが、いまの米国の動きが世界の平和や日本の国益に貢献するものでないことだけは明らかです。
中国と対峙するのであればロシアとは和平を結び、ロシアと事を構えるのであれば中国との関係は良好にしておく、というのが定跡のはず。米国が、ロシアと中国の二正面作戦を自ら展開し、ロシアと中国の同盟関係をわざわざ強固にするという手を打つのだとすれば、ロシアに対してはウクライナを「駒」として「代理戦争」を行い、中国に対しては台湾と日本を「駒」として「代理戦争」を行わせて、ロシアと中国を疲弊させる肚なのかもしれません。日本は、対ロシアの「駒」として消費されるリスクすらあります。高値の米国製武器だけ渡されて「自分たちで戦いなさい」と言われているウクライナは、日本の近未来の姿です。
日本の保守政治家たちは「防衛費をGDPの1%から2%にしろ!」と騒いでいますが、仮に1%が2%になったところで、今のウクライナのように、防衛力の強化にはそれほど役立たない米国の最新兵器を高値で大量に買わされて終わるだけです。そんな無駄遣いをするくらいであれば、「自衛隊員の月給を10%引き上げる」「初任給を高卒でも20万円以上にする」とか「撃つたびに薬莢を拾いに行かなくてもよいようにする」などの具体的な対策を講じて、結果的に1%を上回る場合は黙認するというスタンスのほうが実務的で効果的でしょう。
エネルギーも食糧も自給できない日本は、いま経済的に極めて脆弱なポジションに置かれており、止まらない円安が悩ましい現状を物語っています。日本としては、ウクライナ戦争に関して「即時停戦・和平協議」の方向を探るべきですが、それが難しいのであれば、万が一「AEZ+SWIFT 2.0」が成立した場合に英米が孤立してしまうリスクに備えて、今から確かな布石を打っていくことが必要です。最悪の事態に陥ったとしても、英米とともに世界から孤立するのではなく、「AEZ+SWIFT 2.0」と米英の仲介ができる立場を勝ち取るべきでしょう。いまは、「日本の国益」にとってかなりの正念場。判断を誤れば、禍根を残します。
【読む・観る・理解を深める】
➡ IMF がプーチンが仕掛けた「ドル本位制の崩壊」という経済戦争に気付きました。しかし、中国・インドはロシア側につくでしょう。サウジ・UAE・ブラジル・南アフリカも参加するか?
➡ CIPS は、経済制裁を受けたロシアとの連携でどう変身するのか?
➡ The Bretton Woods 3:国際金融システムが大変革する!
➡ プーチンと習近平は、ドルを基軸通貨とした国際経済に戦いを挑む?! これは両国にとってチャレンジする価値のある戦いだ!
➡ ペトロダラー体制の崩壊?:これって、マジで「ドル本位制」から「マルチカレンシー制」へと展開したい勢力がかなりいるってことだよね。
➡ プーチンは、マジで「米ドル経済圏からの離脱」を考えているのか? もし、そうなら、一大事件だ! 中国・インド・ブラジルは追随するだろう。
➡ 経済制裁でプーチンは失脚しませんよ。キューバを見なさい。イランを見なさい。それが現実です。
➡ ロシア経済の今後について、実務家が予測しています。ロシアは村八分になる? でも、デフォルトはしない?
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