個人的にいま一番関心があるのは、現在の経済制裁の下でのロシア経済。始めの頃は、数多くの論者と同じように、①ロシア経済はかなり困窮化する→②プーチンは西側市場への復帰を求めて交渉する→③ウクライナとの和平合意を含めて国際秩序は回復する、というメインシナリオを描いていたのですが、どうも違うんじゃないかという気がしてきました。

というのも、2014年から8年間もの歳月を費やして、経済制裁をされた場合に備え、プーチンが「ロシア経済のデカップリング=ドル経済圏からの脱却」を目論んでいたのではないか、という「当初なかった読み」が自分の中で否定できなくなってきたからです。

実際、下記の諸事実は、そんなに簡単には「ロシア経済が困窮化しない」ということを示唆しています。とはいえ、よくわからないので、まだまだ調べる必要があると思っています。
①ロシアは、超均衡財政を続けており、政府債務は大きくない。
②決済通貨や保有資産がドルに偏ることを避け、金塊を含んで、巧みに多様化・分散化を図ってきた。
③SWIFT排除から、ロシア最大のズベルバンクやガスプロムは除かれており、ヨーロッパはロシアに対する支払いを続けている。
④欧米を中心とした経済制裁の輪は、それほど広がりを見せておらず、一部の国を除いて、交易に不都合は生じていない。
⑤中国やインド、イランなど近隣国は、ドル以外での決済を受け入れており、ドル本位制ではない経済圏が広がる気配がある。
⑥ロシアは、エネルギーと食糧を押さえているので、生活レベルはともかくとして、自給自足ができる。
⑦逆に、エネルギーと食糧とレアメタルが不足するため、経済制裁が長引けば、困るのは欧米だという面もある。
⑧ロシアの領空を航空機が飛べないことは、欧米における物流を困難にする。
⑨他国からの経済制裁は、国内のナショナリズムを高揚させ、自国のリーダーに対するロイヤルティを上げる側面がある。
⑩実際に、キューバやイラン、ベネズエラや北朝鮮など、経済制裁されて倒された政権はほとんどない。

さらに言えば、プーチンは、西側と気脈を通じるオリガルヒたちを「この際一掃したい」という希望を持っており、西側との交易が途絶えることは、経済を純化(purify)するには好都合だと思っている節があります。そのために、様々な対応策を周到に準備していたとすれば、なかなかの策士です。

エリツィン時代の経済自由化は、西側の資本家に好きなようにやられ、オリガルヒのような一部の人たちを豊かにしただけで、国内の経済格差を広げるだけに終わりました。プーチンによる経済政策の眼目は、そういう西側に組み込まれたオリガルヒたちを追放し、国民に豊かになる機会を与えること。その意味では、プーチンによる経済政策の総仕上げになるのかもしれません。

じつは、この「ドル経済圏からの脱却」を中国やインド、ブラジルなどと一緒に実行することができれば、米国の経済覇権を根底から覆すことになります。この企てに習近平は賛成するでしょうし、インドやブラジルも追随するでしょう。もしも、ここまでプーチンが狙っているのだとすれば、恐ろしい策謀家です。



【読む・観る・理解を深める】
➡ ウクライナを語るのであれば、最低限「オデッサの惨劇」を知っておく必要があります。この事件を知らなければ、今回のロシア侵攻を語る資格はないと思います。
➡ 少なくとも、バイデンという男が、上院議員として、副大統領として、そして現在の大統領として、どのようにウクライナを扱ってきたのかは知っておいた方がいい。
➡ 米国の政治情勢から、「プーチン悪者論」を分析する論者たちの話です。
➡ ウクライナの真の情勢を読むための知識を身につけよう。
➡ ウクライナ危機に関しては、複眼的な情報を確認しておきましょう。
➡ 馬淵睦夫・元ウクライナ大使:2014年のウクライナ危機を振り返ろう。
➡ ウクライナ危機に関しては、メジャーなマスコミの情報だけではなく、様々な専門家の意見も聴いておきたいですね。