河野ワクチン大臣は、自身のブログにおいて、勇敢にも「コロナワクチンの長期的な安全性について特段の不安があるということはありません」と断言しました。しかし、日本感染症学会が組成したワクチン委員会は「COVID-19 ワクチンに関する提言」を公表しており、コロナワクチンの副反応について、懸念されるリスクを記しています。最新版は2021年6月16日に公表されており、河野大臣のブログが「ワクチンデマについて」を書いた6月24日の1週間前。ほぼ同時期なので、同じ情報に基づいた文書であると考えてよいと思われますが、素人目にはニュアンスがかなり違うように感じます。

【日本感染症学会】mRNA を今後繰り返し投与する場合の安全性や LNP に含まれる脂質の長期的な安全性はまだ明らかになっていません。・・・いずれの COVID-19 ワクチンもヒトでは初めての試みですので、どのような副反応がどのくらいの頻度でみられるのかを理解し、接種後の健康状態をよく観察しておくことが重要です

【日本感染症学会】新しく導入されるワクチンについては、数百万人規模に接種されたのちに新たな副反応が判明することも考えられます。数年にわたる長期的な有害事象の観察が重要です

まあ、もっとも、河野大臣は政治家ですから、言質を取られないように、うまい言い回しを駆使しています。大臣は「特段の不安があるということはありません」と指摘しただけであり、日本感染症学会も「まだ明らかになっていません」「よく観察しておくことが重要です」「数年にわたる長期的な有害事象の観察が重要です」と言っているだけで、「特段の不安がある」と言っているわけではありません。したがって、河野大臣のサイドに立てば、大臣と日本感染症学会の間で何ら意見の相違はない(?)ということになるのかもしれません(汗)。

また、河野大臣は、ブログで、「新型コロナワクチンに関して、ADEの可能性は考えにくいとされています」と記していますが、日本感染症学会のワクチン委員会は、同提言において、下記の点を明記しています。これも素人目には、かなりニュアンスが違うような気がします。

【日本感染症学会】接種を受けた人が標的とした病原体による病気を発症した場合に、接種を受けていない人よりも症状が増悪するワクチン関連疾患増悪(vaccine-associated enhanced disease, VAED)という現象にも注意が必要です。・・・COVID-19 と同じコロナウイルスが原因である SARSや MERSのワクチンの動物実験でも、一部にVAED を示す結果がみられています。COVID-19 ワクチンの動物実験や臨床試験では、これまでのところ VAED を示唆する証拠は報告されていませんが、将来的に注意深い観察が必要です

無論、上記の点についても、河野大臣はぬかりありません。「・・・とされています」として、自分が断定した形を避けただけでなく、主語が不明な伝聞的な言いぶりにとどめています。しかも、ブログの中では「ワクチンや過去の感染により作られる抗体が、ウイルスの感染を増強してしまうことをADEといいます。デング熱ワクチンやSARSワクチンでこのようなことが起きたことがあります」と事実を淡々と指摘する形で一応ヘッジしています。なかなかに老獪で周到です。

しかし、日本感染症学会は、「将来的に注意深い観察が必要」と記していますから、先ほどの「よく観察しておくことが重要です」とか「長年にわたる観察が重要です」という「一般的な文言」と比べれば明らかなように、副反応のリスクに対して、一歩踏み込んで、明らかな「警鐘」を鳴らしているわけです。それは、コロナワクチンを接種することによりVAEDが発生するメカニズムを叙述した下記の論文に精通しているからです。河野大臣は、果たして、下記の論文を熟読した上でブログを書かれたのでしょうか。この点は、かなり気になります。

Anti–spike IgG causes severe acute lung injury by skewing macrophage responses during acute SARS-CoV infection(2019.2.21:JCI Insight)

In SARS-CoV/macaque models, we determined that anti–spike IgG (S-IgG), in productively infected lungs, causes severe ALI(fatal acute lung injury)by skewing inflammation-resolving response. ・・・Our findings reveal a mechanism responsible for virus-mediated ALI, define a pathological consequence of viral specific antibody response, and provide a potential target for treatment of SARS-CoV or other virus-mediated lung injury.

なお、同ブログにおいて、河野大臣は、「これまでのワクチンで、不妊が起きたことはありません。今回のコロナワクチンでも、不妊が起きるという科学的な根拠は全くありません」と断言していますが、日本感染症学会は、「妊婦および胎児・出生児への安全性が確認されていない」という立場ですので、意見は異なるようです。当該部分は、【第1版(2020.12.28)】【第3版(2021.6.16)】の間で、微妙にニュアンスが違う部分もあるので、ニュアンスの変化を楽しみながら、日本感染症学界の当局との間でどのようなやり取りがあったのかを想像しながら、じっくりとお読みください。

【第1版】妊婦については、「妊婦への安全性」が確認されていないため、現時点では優先接種対象者に含めることはできないと考えます。国内外の臨床試験において「妊婦への安全性」が一定の水準で確認された時点で再検討すべきです。
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【第3版】妊婦については、「妊婦および胎児・出生児への安全性」が確認されていないため、現時点では優先接種対象者には含まれていません。国内外の臨床試験において「妊婦等への安全性」が一定の水準で確認された時点で再検討すべきと考えます。なお、日本産婦人科感染症学会と日本産科婦人科学会は、「流行拡大の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外することはしない」としており、「感染リスクが高い医療従事者、重症化リスクがある可能性がある肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している方は、ワクチン接種を積極的に考慮する」と提言しています。また「器官形成期(妊娠 12 週まで)は、偶発的な胎児異常の発生との識別に関する混乱を招く恐れがあるため、ワクチン接種を避ける」ことを注意しています。

【第1版】小児を対象とした COVID-19 ワクチンの臨床試験は実施されておらず、安全性が確認されていないため、今回は対象には含められないと考えます。ただし、小児でも慢性疾患患者は重症化リスクが高いため、このような小児の周りにいる方への接種は検討が必要です。今後国内外の臨床試験で小児への安全性が確認された場合は再検討が必要です。
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【第3版】小児科領域の慢性疾患は、16 歳未満を対象とした COVID-19 ワクチンの臨床試験が実施されておらず、安全性が確認されていないため、今回は対象には含められていません。ただし、小児でも慢性疾患患者は重症化リスクが高いため、このような小児の周りにいる方には早期の接種が必要です。今後国内外の臨床試験で小児への安全性が確認された場合は再検討が必要です。

いずれにせよ、河野大臣に匹敵する勇ましさで「不妊はデマだ!」と断言することは、日本感染症学会には難しいようです。無論、河野大臣も、「不妊が起きるという科学的な根拠は全くありません」と述べているだけで、「不妊にはならない」とか「不妊が起きないという科学的な根拠があります」とは言っていませんから、ぎりぎりセーフだということなのでしょう。

でも、一般庶民の感覚で、日本感染症学会の文章と河野大臣のブログ内容を淡々と比較したとすれば、「大臣のブログはかなりミスリーディング」だと思うのではないでしょうか。もしも、審判が一般庶民の素人だったら、河野大臣の過激な主張は「言い過ぎている」として、「河野大臣の負け」と判断されて撃沈されてしまうような気がします(ワクチン大臣ゲキチン(笑))。

もっとも、勝敗を捌く審判が、大人の事情がわかる「プロ」だったら、河野大臣の巧みな言い回しを高く評価した上で、「河野大臣は何ら虚偽を申し述べていない!」と裁定し、「河野大臣は全然負けてはいない」という判断を下すのかもしれません。それにしても、お座敷芸者のように、大臣発言に追従するだけの医者や専門家が毎日のように大勢テレビに出てきて無責任な発言を垂れ流しています。呆れるほど、飽きるほどに、正確性に欠ける発言を繰り返します。彼らは発言の内容に留保条件を付けることすらしません。きっと彼らには良心がないのでしょう。知性もないのかもしれませんが・・・。

➡ 河野大臣が「ワクチンデマ」についてブログで解説しています。異なる主張を展開する学術論文も熟読した上で、自分の頭で考えましょう。河野大臣の反論は「勝利宣言」になるのか?!も参考になります。

➡ ファイザーからおカネもらってたら、ワクチンの悪いことは言えないよね。ワクチン接種後の死者が2021年の半年だけで、1990~2020年の30年分の死者数を超えている理由を解説してほしい!も参考になります。

➡ コロナ問題やワクチン問題を、科学的・体系的に理解したい方は、「科学的事実①:はじめに」から「新型コロナウイルス感染症に関する科学的事実(第三版:2021.5.24)」をお読みください。