イスラエル・ハマス紛争については、様々な論点が複雑に絡み合い、視座によって分析結果が大きく異なり得ます。浅学ゆえに、自分なりの主張の基軸を定める作業にかなりの時間を要しましたが、現時点までに知り得た情報を基に、暫定的な結論をまとめてみました。

① 議論の出発点を「オスロ合意(1993年)」に定める。イスラエルのように3000~4000年前まで遡る(旧約聖書)ことも、パレスチナのようにバルフォア宣言(オスマントルコの弱体化を狙った英国がユダヤ人に対しイスラエルの建国を約束)を非難することもしない。これらの点は、後世の歴史の検証に委ねるというスタンスに立つ。

➁「オスロ合意」に反して、パレスチナを認めないスタンスを貫いてきたのはイスラエルであり、「アブラハム合意(2020年)」を遵守せずに、入植政策を断行し続けてきたのはイスラエルである。

③ 国連憲章において、植民地や侵略された地域における市民の武装蜂起は「権利」として認められており、今回のハマスの攻撃をその文脈で語ることは不可能ではないが、無辜の市民を巻き添えにし、人質に取る行動は「テロ」だと批判されても仕方がない。

④ 今回のハマスの攻撃に対抗して、イスラエルがハマスの拠点であるガザ地区に反撃を加えることは、至極当然の権利だが、ハマスとは直接関係のない一般のパレスチナ市民を主たる攻撃目標とする、空軍による絨毯爆撃を連日実施することは「虐殺(genocide)」であり、「民族浄化(ethnic cleansing)」と批判されても仕方がない。

⑤「オスロ合意」が提示した「Two State Solution」に納得できないネタニヤフ政権は、自らの「One State Solution(パレスチナ人を追放し greater Israel を実現する)」を達成するために、「Two State Solution」での共生を目指す PLO に対抗させる目的で、「One State Solution(ユダヤ人を追放しパレスチナ人の元々の領土を奪還する)」を掲げるハマスを支援し、その強大化を手助けしてきた。その意味で、今回の悲劇は、ネタニヤフ政権が招き寄せたものでもある。

⑥ 特に昨年末に成立したネタニヤフ政権(第6次)は、連立した極右勢力の強い影響下にある。さらに、ネタニヤフ自身が自らの刑事事件から免れるために権力の維持に腐心しているため、完全なる「One State Solution」に強く固執する極右勢力が主張するままに、ガザ地域への入植を強引に推し進めることにより、パレスチナ人との軋轢を高め、ガザ地域における市民の死傷者を多数産み出してきた。

⑦ 上述したネタニヤフ政権による苛政に対して、パレスチナ市民のみならず、アラブ諸国からも「明らかなアブラハム合意違反であり、かつ、人道にもとる行為である。即刻是正すべき」との批判が寄せられてきた。また、ハマスも、是正しない場合の報復を示唆する批判声明を出し続けてきた。しかし、ネタニヤフ政権は完全に黙殺した。

⑧ 上記の経緯を熟知しているアラブ諸国は、イスラエル空軍によるガザ地域のパレスチナ市民(ハマスではない)に対する連日の無差別爆撃に怒り心頭に達している。このため、「民族浄化(ethnic cleansing)」であるという立場から、反イスラエルで結束した。イランやトルコまでをも巻き込んだイスラム諸国が一致団結して、イスラエルを批判するというのは、これまでになかった事態と言ってよい。

⑨ ブラジルが提案した「人道的な停戦要請」という国連決議に反対したのは、米国とイスラエルだけだったことからもわかるように、イスラム諸国以外の国際世論も反イスラエルに傾いており、イスラエルに対する無条件の支持を公言した米国は、自ら孤立を深め、Unipolar World の「終わりの始まり」を確固たるものにしてしまった。

⑩ バイデン政権は、ウクライナ紛争における「敗戦」を誤魔化すために「新たなる戦争」を渇望しており、「イランとの戦争」を喧伝し始めた。具体的には、(原油利権を奪取するために不法に占拠している)シリアの米軍基地を守るためという名目で、戦いの火蓋を切る可能性すらある。世界は極めて危ない情勢にあると言わざるを得ない。

⑪ ネタニヤフ政権は、今回のハマスの攻撃を事前に察知していた蓋然性が高く(エジプトが事前通告)、規模やダメージを読み誤ったという余地はあるものの、「ハマスに攻撃させて、ガザ地域を侵略する大義名分を得る」という深謀遠慮があった可能性は否定できない。

⑫ ネタニヤフ政権が当初喧伝した「赤ん坊首切り事件」はデマの可能性が高く(イスラエル自身が証拠の存在を否定)、「赤ん坊の乳母車をイラク兵が放り投げた」という嘘を広めたナイラ証言(湾岸戦争を起こす大義名分になった)に酷似したネタに見えて気味が悪い。ガザ市内の病院に対する爆撃を「ハマス(もしくはイスラム聖戦団)によるものだ」と判断した証拠も根拠薄弱ということが明白になった。

⑬ 以上を総括すれば、イスラエルを「絶対の正義」として論評するというスタンスにはかなりの無理があり、ハマスの行為を「悪」として糾弾すべきだとしても、イスラエル空軍によるパレスチナ市民(ハマスではない)に対する無差別攻撃は正当化されない。

上記を踏まえた個人的な見解は、「紛争当事者に対し即時停戦を要請し、ハマスには人質の解放を、イスラエルは空爆の停止を求め、外交的な早期解決を目指すべきであり、罷り間違っても、第三次世界大戦につながるようなエスカレーションを許すべきではない。それが正義であり、日本の国益にも叶う」というものです。

上記の見解を覆すような「事実」が判明したときは、さらに熟考し、各種の証拠を再検討した上で見直すことにします。



【読む・観る・理解を深める】
【イスラエル・ハマス紛争の基礎知識①】イスラエルがハマスを産み出した。
【イスラエル・ハマス紛争の基礎知識②】イスラエルの強硬派は「One State」を追求し続ける。
【イスラエル・ハマス紛争の基礎知識③】イスラエルは、ガザの人々を Human Animal と呼ぶ。
【イスラエル・ハマス紛争の基礎知識④】民族浄化(ethnic cleansing)と批判されても仕方ない。
【イスラエル・ハマス紛争の基礎知識⑤】ヨルダン国王は「Palestinian lives matter!」と訴えた。
【イスラエル・ハマス紛争における情報戦①】ハマスによる「赤ん坊首切り事件」はフェイク?!
【イスラエル・ハマス紛争における情報戦②】病院の爆破はイスラエルによるものだ!?
【イスラエル・ハマス紛争における情報戦③】病院への爆撃はイスラエルのものであった!!
【イスラエル・ハマス紛争における情報戦④】イスラエルはWESTを味方に付け、嘘を垂れ流す。
【イスラエル・ハマス紛争における情報戦⑤】イスラエルは、国際世論における支持を失った。
【メディアに騙されないための基礎知識①】戦争を起こすのはいつもメディアである
【メディアに騙されないための基礎知識②】嘘の「ナイラ証言」は戦争を正当化した
【メディアに騙されないための基礎知識③】戦争プロパガンダには10の法則がある
【メディアに騙されないための基礎知識④】ウクライナ戦争に関するプロパガンダ
【メディアに騙されないための基礎知識⑤】ロシアも中国も米国も欧州も嘘だらけ