【mRNAワクチンに関する最低限の科学知識⑥】(2022.3.6)
*RNAからDNAになるという「逆転写」は起こり得る

「DNAからRNAに転写されるという一方向しかあり得ず、RNAからDNAに逆転写されることはない」というセントラルドグマは、1970年に逆転写酵素が発見され、逆転写が立証されたことにより、すでに覆されています。実際、新型コロナウイルスと言われているRNAの遺伝子をPCR検査で検出する際には、逆転写酵素を用いてDNAに逆転写しているわけですが、「ヒトの細胞は、RNAのメッセージをDNAに書き込むことができる」という研究まで出てきたようです。

ーーThomas Jefferson University researchers provide the first evidence that RNA segments can be written back into DNA.
(https://www.sciencedaily.com/releases/2021/06/210611174037.htm)

Polθ reverse transcribes RNA and promotes RNA-templated DNA repair
【Science Advances:2021.6.11】
ーーOur study unexpectedly reveals that Polθ reverse transcribes RNA and undergoes a significant structural transformation to accommodate a DNA/RNA template.(https://advances.sciencemag.org/content/7/24/eabf1771)

実際、2020年12月の段階でも、実験室における実験ですが、新型コロナウイルスのRNAがDNAに逆転写される可能性があることを主張する論文は存在していました。

SARS-CoV-2 RNA reverse-transcribed and integrated into the human genome
【BioRxiv:2020.12.12】
ーーTo experimentally corroborate the possibility of viral retro-integration, we describe evidence that SARS-CoV-2 RNAs can be reverse transcribed in human cells by reverse transcriptase (RT) from LINE-1 elements or by HIV-1 RT, and that these DNA sequences can be integrated into the cell genome and subsequently be transcribed.
(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.12.12.422516v1)

そして、決定版の学術論文が、2022年2月にスウェーデンの研究者たちによって公表されました。なんと、たった6時間でmRNAワクチンによって産生されたRNAからDNAに逆転写されてしまうそうです。興味のある方は「Intracellular Reverse Transcription of Pfizer BioNTech COVID-19 mRNA Vaccine BNT162b2 In Vitro in Human Liver Cell Line」をお読みください。
メッセンジャーRNAワクチンの影響を怖れる人々を無知蒙昧の科学音痴と蔑み、上から目線で「メッセンジャーRNAがDNAに組み込まれることなどない!」と断言してきた方々は、どのように反論されるのでしょうか?



コロナ感染者のゲノムからもコロナウィルスは検出された:
 米国科学アカデミー紀要に掲載された論文から
https://note.com/hiroshi_arakawa/n/n14555ce0fbf1

荒川央 2021年8月15日

3回に渡る逆転写についての記事の最後になります。遺伝子組換え解析の専門技術的な説明が続くため、どうしても難しくなってしまいますので、興味のある方以外は最後の結論だけを読んでくださっても大丈夫です。

逆転写酵素を過剰発現していない細胞でもコロナウィルスRNAが逆転写されてゲノムに組み込まれる事はあるのでしょうか? この可能性を検証するために、逆転写酵素発現プラスミドを強制発現させない条件で、SARS-CoV-2を感染させたHEK293T細胞およびCalu3細胞からゲノムDNAが精製されました ・・・。前回の記事で紹介した実験では、コロナウィルスのゲノム挿入を確認するために、ヒトDNAの全ゲノムシークエンシングを行なっています。その場合ウィルスゲノムが挿入されていない部分の配列データはほぼ無駄になるわけです。今回の実験では、効率を上げるためにウィルスゲノムが挿入された領域のみに解析が絞られました。そのためにTn5タグメンテーションの技術が使われています。以下、米国科学アカデミー紀要に掲載された論文の続きです。

タグメンテーションはトランスポゾンの転移酵素 (トランスポゼース) を利用し、特定のDNA配列 (タグ) を付加すると同時にDNAを断片化する技術です・・・。SARS-CoV-2上にデザインしたプライマーとタグ上のプライマーでPCR増幅をかける事により、SARS-CoV-2とヒトゲノムと組換えを起こした結果できるキメラ配列のみをPCRで増幅する事により、濃縮する事ができます ・・・。このようにSARS-CoV-2のヒトゲノムへの挿入部位の濃縮シークエンスを行った結果、SARS-CoV-2がゲノムに挿入された根拠となる遺伝子配列が検出されました。・・・ヒトゲノム (青色) とSARS-CoV-2 (ピンク色) のキメラ配列で、対応するヒトゲノムは15番染色体に・・・、SARS-CoV-2は末端付近に・・・見つかります。HEK293T細胞から2例、Calu3細胞から5例、ゲノムへの挿入が見つかりました・・・。

ではコロナ感染患者のゲノムにコロナウィルスが取り込まれる事はあるのでしょうか。ゲノムに挿入されたコロナウィルスの向きはランダムであると推定されます。そのため、発現している宿主遺伝子に統合されたウイルスDNAの約半数は、宿主細胞遺伝子の転写方向とは反対の向きになるはずであると予測されました・・・。実際にナノポアのデータセットでは、ヒト遺伝子に取り込まれたウイルスの約50%が宿主遺伝子と反対の方向でした ・・・。このようにウイルス配列がゲノムに組み込まれた結果できるキメラ転写産物では、ヒト遺伝子とウィルス遺伝子の向きが反対のものが約50%を占めました。

コロナウィルスのゲノムはRNAです。DNAを介さずにRNAからRNAを複製するために、コロナウィルスは自前のRNA依存性RNA複製酵素の遺伝子を持っています。コロナウィルスは正鎖 (遺伝子を転写するための鋳型) のRNAから負鎖のRNAを複製し、それを鋳型として大量のRNAウィルスゲノム (正鎖) をコピーします。急性感染したCalu3細胞や肺オルガノイドでは、ウイルスの総リード数の0~0.1%だけが負鎖RNAに由来していました・・・。つまり、急性感染細胞では正鎖は負鎖の少なくとも1,000倍多くなるという事です。ディープシークエンスのためのRNA-seqライブラリ作成時のアーティファクト (実験のエラーによる副産物) でも、コロナウィルスとヒト遺伝子の組換え体が生じるかもしれません。その際には技術的な理由により、コロナウィルスとヒト遺伝子の正鎖同士がキメラになる事が推定されます。急性感染した細胞/臓器では、ヒト-ウイルスキメラリード中には正鎖がほとんどで、負鎖のウィルスは0~1%しか含まれていませんでした ・・・。こうしたものの中ではゲノムに挿入されたSARS-CoV-2の配列に由来する配列はごく一部であると考えられます。

急性感染したCalu3細胞や肺オーガノイドで得られた結果とは対照的に、一部の患者由来の組織では、全ウイルスリードの最大51%、ヒト-ウイルスキメラリードの最大42.5%が、負鎖のSARS-CoV-2 RNAに由来していました ・・・。一部の患者の組織における負鎖RNAの割合は、急性感染した細胞やオルガノイドにおける割合よりも桁違いに高かったのです・・・。このようなケースでは、ウイルスの転写産物の大部分が宿主ゲノムに取り込まれたSARS-CoV-2配列から転写されたものである可能性が高いという事です。結論としては、「コロナウィルスが逆転写されてゲノムに挿入される事はある」という事です。さらに、そうした遺伝子座からコロナウィルス遺伝子とヒト遺伝子のキメラ遺伝子が転写される事があります。コロナウィルスの逆転写には、ヒトゲノム由来の逆転写酵素が利用される事もあれば、あるいは同時に感染したレトロウィルスの逆転写酵素が利用される事もあるようなのです。

【読む・観る・理解を深める】
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➡ コロナ問題やワクチン問題を、科学的・体系的に理解したい方は、「科学的事実①:はじめに」から「新型コロナウイルス感染症に関する科学的事実(第三版:2021.5.24)」をお読みください。