ウィルスの単離について
https://note.com/hiroshi_arakawa/n/nbf45f9db01db

荒川央 2021年9月18日

ウィルスの単離についてのお話です。・・・なぜ日本を含む世界中の政府や各自治体、研究機関に「新型コロナウィルスの存在」の根拠を問うても、誰もその明確な答えを示せないのでしょうか。・・・私自身は「新型コロナウィルスが存在しない」とまでここで主張したいのではありません。各国政府や自治体は、国民に過酷な自粛生活を押し付け、安全性が保証されていないワクチンを打たせ続けながら「新型コロナウィルスの存在証明は持っていない」、すなわち「新型コロナウィルスが存在しているかどうかは分からない」などとなぜ堂々と返答できるのだろうと単純に不思議に思っているのです。

・・・この話題に関連する話ではしばしば用語が混同されているように見受けられます。「分離」と「単離」の違いです。「分離」とは混合物をある成分を含む部分と含まない部分とに分ける事です。これに対して「単離」とは一つの成分のみを取り出す事です。「分離」とは単に「separate」の訳語として使われる事も多いですし、「分離」という言葉には曖昧さが伴います。英語の「isolate」の訳語は「分離」よりも「単離」の方が適切かと思います。事をさらにややこしくしているのが、論文でウィルスを「isolate」したと書いてあるものでも、データをよく確認すると実際には純度がほぼ100%のウィルスを取り出したわけでもなく「単離」はできていない場合もあるのです。最終的に実験の手法や結果まで見ないとその判断はできず、研究の現場でも言葉が曖昧に解釈されたり使用されているケースが見られます。ウィルスの「単離」とはウィルスの「クローニング」という言葉で言い換えても良いかもしれません。クローンとは「同一の起源を持ち、なおかつ均一な遺伝情報を持つ核酸、細胞、個体の集団」の事です。「クローン」はギリシア語で、本来の意味は「挿し木」です。実際、挿し木も元の木のクローンです。

繰り返しになりますが、ウィルスの病原性を明らかにするにはウィルスを「分離」しただけでは不足です。単一のウィルスのみをほぼ純度100%で精製つまり「単離」する必要があります。そもそもコロナは現在世界中でこれほど「大流行」しているのです。コロナウィルスの感染実験に適した細胞株もありますし、ウィルス学や感染症の専門家にとってそれが不可能なほど難しいとは到底思えません。単一のウィルスに精製しなければ、生物学的、物理的、化学的、病理的性質が調べられません。実は遺伝子配列を調べている細胞上清分画には10種類のウィルスが混じっていて、配列はそのうちウィルスAとBとCの混ぜ物で、顕微鏡写真はウィルスDのもので、感染性や毒性はウィルスEとFによるものだった、という可能性すらあるわけです。


さて、そもそもウィルス単離とは例えばどういう実験なのか。画像で見ると少しイメージが湧きやすくなるかもしれません。ウィルス単離法の1つの例をお話しします。

1) ウィルスを感染させる細胞を培養します。この実験で使っている細胞は2種類。HEp-2細胞とVero細胞です。HEp-2細胞はヒトの上皮種、Vero細胞はアフリカミドリザルの腎臓上皮細胞です。これらの細胞は接着性の細胞と呼ばれ、プラスチックの培養皿に密着したまま増殖します。人間の細胞のほとんどは接着性の細胞です。多細胞生物では、細胞がお互いに接着する事によりそれぞれの臓器や器官の構造と機能を形成、維持しています。ちなみに、接着性の細胞の対称となる言葉は浮遊性の細胞です。血球系の細胞であり、赤血球以外は様々な免疫系の細胞です。

2) 培養皿の底面を埋め尽くすまで細胞を培養し・・・こうした状態の細胞にウィルスを感染させます。ウィルスの濃度が高いと細胞のほとんどに感染するかもしれませんが、ウィルスの濃度を段階的に希釈していくと、まばらにウィルスが感染するような濃度も含まれます。

3) 段階的に希釈した異なった濃度のウィルスを培養細胞に加えた後、37℃の細胞培養機内で1-4時間待ちます。この間にウィルスが細胞に感染します。

4) ウィルス液を取り除き、アガー (寒天) 入りの細胞培養液を上乗せします。寒天培地によってウィルスは移動を妨げられ、最初に感染した細胞の付近の細胞にのみ感染できるようになります。

5) 1週間程度培養を続けます。

6) 生細胞のみを染めるニュートラルレッド色素で細胞を処理すると、生細胞は赤く染まり、死細胞は白いままです。ウィルスが感染したため死んだ細胞群は白いまま残ります。この死細胞の塊がプラークです。プラークは細胞が死滅した斑であり、それぞれのプラークは基本的に1粒子のウィルス由来です。プラークを掻き取る事によりウィルスを単離する事ができます。・・・

上の図のa、b、cは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のA2株、A Long株、B株です。dはパラインフルエンザウイルス3型です。RSVはVero細胞 (上段) よりもHEp-2細胞 (下段) でより大きなプラークを形成しました。パラインフルエンザウイルスはVero細胞で問題なく大きなプラークを形成しました。ウィルスや感染細胞株、実験条件にも左右されるのですが、良い条件下ではプラークは肉眼で十分見える大きさです。上記の実験では、培養皿の直径が35 mmである事からも分かるようにプラークの直径は1〜数mmです。それぞれのプラークを掻き取る事で、単一粒子由来のウィルス、つまりウィルスのクローンを単離する事ができます。仮に最初の検体に複数種類のウィルスが含まれていたとしても、それぞれのプラークを掻き取る事によりウィルスを別々に単離する事もできます。プラークの数は感染可能なウィルス粒子の数を意味します。プラークの数を数える事でウィルスを定量化する事もできます。こうしてウィルスの感染力の力価を測定できるわけです。

まとめると、ペトリ皿一杯に細胞を培養し、その上に感染させたいウィルスをまばらに撒いて、それを寒天で固定する。ウィルスが感染した場所に「穴」が開くので、そこからウィルスを取り出すと単一ウィルス由来のクローンウィルスが取り出せる。これがウィルス単離の過程です。単離したウィルスはクローンであり、増殖の間に変異は入るものの、基本的に同じ遺伝子配列を持つ均一のウィルスです。これを再度、細胞に感染させる事により大量に培養が可能です。大量に調整したウィルスを電子顕微鏡で解析して形態上の均一性を確認し、またディープシークエンシングで塩基配列と純度を確認できれば、単離が成功した事が保証されます。

病原性のウィルスを取り扱うには、それぞれのウィルスに応じたバイオセーフティーレベル (BSL) の格付けの実験室・施設が必要になります。例えば現在BSL4の実験室はかつてはP4と言われていたものです。「P」は物理的封じ込め (Physical containment) の意味ですが、Pが "Pathogen"(病原体)や "Protection level"(防御レベル)の略などとされる事もあり混乱が生じたため、現在ではBSL の名称が用いられるようになりました。新型コロナウィルスを取り扱うにはBSL3の施設が必要です。例えば私が現在所属する研究所ではBSL2までの施設しかなく、新型コロナウィルスを取り扱える研究機関自体は限られます。ただし新型コロナウィルスの遺伝子の研究や新型コロナウィルス遺伝子を発現する細胞や動物の研究はその限りではありません。

ウィルス単離は病原性ウィルス研究の過程でまず第一にやるべき事の一つです純度の高いウィルスが利用できて初めてその病原性を解析する事が可能になるからです。例えば純度10%のウィルスしか手に入らない場合、その検体が病気を起こせても10%の割合のウィルスが起こしているのか、残りの90%の何か分からないものが病気の原因なのかが分からないのです。単離したウィルスは、ウィルスの化学的、物理的、生物学的特徴を調べるために有用であり、細胞や動物に感染させる事により病原性も解析できます。最近ではラムダ型、ミュー型など次々に新型コロナウィルス変異株が登場して話題になっていますが、単離された純粋なウィルス株無しにそれぞれの変異株の毒性の違い、免疫原性の違いなどの解析は困難でしょう。私が疑っているのは、コロナPCR陽性者が重症になったとして、その中の実際にどのくらいの方がコロナウィルス感染のためだけに重症化しているのだろうか、という事です。PCR陽性者から感染性のウィルスが検出されない事も多いように、「PCR陽性」と「コロナウィルス感染」はイコールではありません。重症患者の中には他のウィルス感染症、バクテリア感染症なども含まれているかもしれません

繰り返しになりますが、私自身は「新型コロナウィルスが存在しない」とまでここで主張したいのではありません。存在するかしないかの境界線は曖昧です。現在の技術レベルではウィルスゲノムでもバクテリアのゲノムでも、設備があれば「合成」する事が可能だからです。化学合成と生物合成を組み合わせる事で、自然には存在しないウィルスやバクテリアでも合成する事自体はできてしまうのです。今現在の時点で無かったとしても、1ヶ月もあれば作る事ができるかもしれません。いずれにせよ、コロナウィルスを単離せずに曖昧なままで来ている事が、コロナウィルス感染症の理解自体の曖昧さに繋がっているように思います。

【読む・観る・理解を深める】
➡ ウイルスや免疫を25年以上研究してきた第一線の研究者の「コロナワクチン解説」です。一読して損はないと思います。
➡ 村上名誉教授は、mRNAワクチンの接種中止を提言! 動物実験で血管や心筋等へのダメージが検証されていて、接種後死亡例が多くあるのに、なぜ厚労省はストップしないのか!?
➡ 孤高の碩学として自説を主張し続ける井上正康先生。異端扱いが王道として認知される日は来るのでしょうか? 食わず嫌いをせずに一度真剣に視聴した上で真偽をご判断下さい。
➡ ワクチン研究で有名な米国ソーク研究所は、コロナワクチンの mRNA が産生するスパイクタンパクが血栓を育成し、健康に害を及ぼす可能性を指摘しました。
➡ メッセンジャーRNAの技術を開発したロバート・マローン博士がスパイクタンパクのリスクについて言及しています。ガセネタであることを祈ります。
➡ コロナ問題やワクチン問題を、科学的・体系的に理解したい方は、「科学的事実①:はじめに」から「新型コロナウイルス感染症に関する科学的事実(第三版:2021.5.24)」をお読みください。